前回は、大王製紙の売上が減ってしまうお話をご紹介しました。
今回は、新聞でも目にする「繰延税金資産」とは一体何かをご説明します。
2012年2月10日の日本経済新聞に、法人税減税と繰延税金資産の関係が書かれていました。
紙面では簡単にしか書かれていませんので、もう少し深堀りして説明しましょう。
繰延税金資産とは
繰延税金資産とは、一言で簡単に言うと税金の前払いのようなものです。
会社に課される主な税金には、法人税と住民税、事業税があります。これらは主に会社の所得に対して課されます。
会社の会計上の利益と所得は必ずしも一致しませんが、税法に従って計算した利益が所得、と考えると分かりやすいでしょう。
一般に、所得が赤字の会社は税金を払いません(厳密には均等割という固定の税金もあります)。 このとき、赤字の分を繰り越して、将来に所得が黒字になり、税金を払わなければならなくなったときに相殺することができます。これを繰越欠損といいます。
景気の影響を受けやすく、赤字になったり黒字になったりを繰り返す企業への公平を期すための制度です。
これまでに赤字が続いた会社は、この繰越欠損金が溜まっています。言わば将来支払う税金のための貯金と言えるでしょう。
ただ、これがどれだけ溜まっているかは、会計上の決算とは異なる税務上の計算であるため、決算書を見ただけでは分からなかったのです。
将来払わなくてすむ税金があれば、将来のキャッシュフローにも影響を与えますし、利益のうちから剰余金に回る金額も変わります。
これから投資しようとする投資家には、是非とも知りたい情報です。
そこで、今年損失が出たとしても、そのうち幾らが将来の税金と相殺できる貯金なのかを把握するため、繰延税金資産という項目に振り替え、将来税金を払うときにそれを取り崩す処理をするようになりました。
(厳密には、赤字以外にも繰延税金資産を生じる理由はあります。また反対に、今年は税金を支払わないで済んだが、将来支払わなくてはならない分を繰り延べる、繰延税金負債、というものもあります)
減税の影響
さて、繰越欠損というものは、いつまでも繰り越せるわけではなく、繰り越せる年数が決まっています(2012年2月現在、7年)。従って、繰延税金資産として計上できる税金の前払いも、将来7年で取り崩せる範囲が限界、ということになります(監査上はもう少し厳しい要件をおいています)。
将来取り崩す原資は、将来払う税金です。将来支払う税金が少なくなると、取り崩せる原資も減ってしまいます。
将来の利益水準が低く、もともと繰延税金資産を取り崩し切れるのもギリギリだった会社は、減税によって将来支払う税金が低くなると、繰延税金資産が取り崩せなくなります。
取り崩せない繰延税金資産は、償却しなければなりません。
法人税税の減税は、高税率の日本企業にはありがたいですが、 償却損が生じるとなると、頭が痛い問題です。
タイトルどおり、よくわかりました。ありがとうございます。
コメントありがとうございました。
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