第5回 貸借対照表-換金できない資産に注意


前回は、決算書をもっと深掘りしてみたい時に、どこで決算書が手に入るかをご説明しました。

今回は、再び貸借対照表に戻って、少し細かく見ていくことにします。

私は、貸借対照表を見るときに、どんな資産で構成されているかを見ることにしています。
その中で、注目するのが、換金できない資産というべきものです。

現金は当然として、在庫や株式などの証券は、幾らで売れるかは別として売ればお金になります。
建物や機械、土地などもそうでしょう。

しかし、貸借対照表の資産を見ていると、そうではない資産もあることに気づきます。
次の貸借対照表を見てください。分かりやすくするため、通常は換金できなさそうな資産に色を付けました。

前払費用というのは、先にお金を払ってあって、今年の費用にはならないが、来年の費用になるものです。家賃の前払いなどがこれに当たります。
長期前払費用というのは、前払費用の一種ですが、費用になるのが来年以降、数年に渡るものです。いずれにしても、先にお金を払ってあるものです。
繰延税金資産というのは、いわば税金の前払いです。
例えば、繰越欠損といって、今年生じた赤字を将来納める税金から差し引くことができたりする場合に、それを先取りして資産に計上しておくことができるものです。
のれんは、最近オリンパスの買収などで新聞にもよく登場するものです。買収した時に、買収先の会社の資産を評価してもなお、買った時の値段が高いときの差額です。
のれんについて、詳しくはこちらをご覧下さい。

前払費用や長期前払費用は、後で必ず費用になるものです。したがって、会社の業績が下向きになりつつあるときは、それらが将来の重荷になってくる可能性があります。
繰延税金資産も、将来に利益が出て、税金を納めるときに差し引ける、という性質のものですので、将来利益が出ないと納める税金も少なくて済む一方、この繰延税金資産も差し引けなくなる、ということになります。
のれんも、その事業を売却するときに幾らの価値を持つものかは分かりません。また、事業そのものが赤字が続くと、「減損」と呼ばれる損失処理を迫られることもあります。
※「減損」について、詳しくはこちら

これらについて共通して言えることは、全て何らかの費用の前払いとか、差額とかいうもので、それ自体は換金が難しいものです。
これらは、事業が順調である時には特に問題はありません。
ただ、事業が順調でなくなってきたときに、将来の収益に大きな負担となったり、あるいは会社の価値そのものに影響を与えることがあります。
筆者は、これらの存在を否定するものではありませんが、業績が下向きつつあるときなどは注意が必要です。

第6回 貸借対照表-借入金の急激な変動に注意に続く

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