「減損」とは

前社長の解任問題でオリンパスが連日話題になっています。
当初は単なる社内コミュニケーションによるものとされていましたが、過去に行われたM&Aの買収価格の問題も浮上し、議論が噴出しているようです。
このM&A案件では、買収してまもなく、リーマンショックによって「のれん」について減損を適用することになったと説明されています。
前回は、その「のれん」について解説しましたが、一方、この「減損」とは何でしょうか。

時を同じく、パナソニックもTV事業で「減損」を行い、1千億円を超える損失を計上すると発表しています。

「減損」とは、文字通り、持っている資産を「減じる」ことによって生じる「損失」のことです。

工場の建物や機械などの資産は、購入した後にその使用期間に合わせて減価償却を行っていきます。
事業が順調な時は、この減価償却をまかなって十分な利益が出ているはずです。
しかし、事業が不調になると、事業の赤字が続き、将来もどうにもなりそうもない、という状況もあり得ます。

このとき、工場の建物や機械などの資産は、引き続き減価償却を行っていくわけですが、この先減価償却を続けても利益がでないとすると、そもそも資産としての価値がないのではないか、という話が出てきます。

現代のように経営環境がめまぐるしく変わる中では、そういう資産を長く置いておいても価値が上がることはあまりありません。
機械などはそのまま持っていても陳腐化していきます。
事業を中止し、別の事業に転換するとしても、工場を取り壊したり、機械を廃棄したりせざるを得ないでしょう。
工場や機械を転売、あるいは事業そのものを他社に転売することもありえますが、赤字事業ですから、やはり売却に際して損失は避けられないでしょう。

このように、事業の将来の見込みが立たなくなった時に、価値を生み出さなくなった資産を現実的な価値にまで落とすことを「減損」といいます。
(実際には、事業の見込み以外にも、土地のような資産そのものの時価が下がったり、物理的に資産がダメになってしまった場合も含まれます)

先のパナソニックの例では、激しい価格競争が続くTV事業から得られる儲けで、TV事業の資産の価値を将来も回収することができない、という評価になったものと考えられます。

減損は、工場の建物や機械などの実体のある資産(「有形固定資産」といいます)のほかにも、先に説明した「のれん」も対象にします。
前に多額の資金を投じて買収した事業から生じた「のれん」も、もしその事業から得られる儲けが低くなってしまったら、「のれん」の価値も低くなる、というわけです。

先のオリンパスの例では、買収はしたものの、そこから得られる儲けが当初の見込みよりだいぶ低くなってしまい、多額の「のれん」を回収できなくなってしまったのでしょう。

減損の会計は比較的新しい考え方です。日本では、多くの会社で平成17年4月から適用開始となりました。
それまでは、経営者は決算について、事業が黒字、赤字、ということだけ考えていればよかったかもしれません。
減損の会計導入後は、事業が赤字に陥ると、たちまち持っている資産そのものまで減損が必要となるケースも出てきて、赤字が増幅する傾向にあります。

常に儲け続けなければならない、いわば全力疾走を常に続けている経営環境にあるといえるでしょう。

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