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日本の労働生産性は低いのかー続き

前回では、労働生産性を単純に算数で分解すると、

労働生産性=就業者一人当たり雇用者報酬
+就業者一人当たり営業余剰
+就業者一人当たり純間接税
+就業者一人当たり固定資産減耗

となり、就業者一人当たり雇用者報酬と就業者一人当たり営業余剰を増やすことで労働生産性は上がることを述べました。

日本の労働生産性が低いのは、過剰サービスが原因であるといった指摘をよく目にします。

しかし、上記の算式をよく見てみると、過剰サービスをやめたからといって、算式に直接影響するわけではなさそうです。
また、生産効率の改善も算式に直接影響しません。もう少し詳しく見てみましょう。

過剰サービスを止めることで就業者一人当たり雇用者報酬と就業者一人当たり営業余剰が上がるなら止めた方が良いのでしょう。
たとえば、過剰サービスをするために余計に人を張り付けておかなければならないのなら、その分の人を減らせば就業者一人当たり営業余剰は上がります。
ただし、人を減らしてしまうと、その人は他に雇用がない限り雇用者報酬を失ってしまいますから、日本経済全体では就業者一人当たり雇用者報酬が一人分減ることになります。
また、そのサービスを減らしたことで、もしお客様がサービスが低下したと思って利用しなくなると、売上が下がり、すなわち就業者一人当たり営業余剰も下がってしまうことになります。
したがって、「過剰サービス」と思われているサービスは、お客様が「過剰」と思っているかがポイントになります。そのサービスは値段のうち、と思っている場合には、そのサービスを止めると顧客離れが起きないかどうかの分析が必要です。飲食店の水は、海外では有料が当たり前ですが、日本では値段のうち、と思われているのが一般的ですから、よほど高級店のミネラルウォーターなどではない限り、水の提供を止めたりすると顧客離れになってしまうでしょう。

反対に、サービスは必要不可欠で、止められると困る、止められるくらいならお金を追加で払ってでも続けてほしい、とお客様が思っている場合には、止めるのではなく適正な料金を頂くべきなのです。そうすることで、売上高が増え、就業者一人当たり営業余剰は上がります。
最近、ヤマト運輸が値上げに踏み切りましたが、今まで通りの宅配サービスを続けるためには、そのコストに相当する料金を頂くべきだという判断が働いています。
日本の労働生産性を高めるためには、正しい判断と言えるでしょう。
「過剰サービス」と思われているサービスを見直すのはもちろんですが、本来は必要性をお客様に理解いただいて、場合によっては適切な料金を頂く、ということも必要であろうと思います。

次回は、この「過剰サービス」について更に踏み込んで分析していきたいと思います。

日本の労働生産性は低いのか

日本の労働生産性は低いのか-巷では昨今よく聞かれるフレーズです。
日本の労働生産性は本当に低いのでしょうか。また、低いとしたらそれを上げるにはどうしたらよいのでしょうか。

公益社団法人日本生産性本部が毎年公表している「労働生産性の国際比較」によると、2015年の日本の労働生産性はOECD加盟国35か国の中で第22位、74,315ドル(783万円)ということでした。
米国は第3位で121,187ドル、日本人が「ラテン系」と称して失礼ながら生産性が低いイメージがあるスペインも日本よりは上位の16位で89,704ドルですから、確かに日本人の労働生産性は先進国の中でみても低いと言えそうです。

ところで、ここでいう「労働生産性」とは何でしょうか。日本生産性本部では次のように定義しています。
労働生産性=GDP(国内総生産)÷就業者数(または就業者数 労働時間)
さらに、国ごとの比較のために為替レートの調整を購買力平価(PPP)により換算しているということです。

日本のGDPはもちろん、日本政府が計算しているわけですが、内閣府ではGDPは国連の定める国際基準(SNA)に準拠しつつ、統計法 に基づく基幹統計として、GDPをはじめとした国民経済計算を行っている、としています(内閣府-「国民経済計算とは」)。
その計算方法はさらに詳しく内閣府が公表しており、
GDP=雇用者報酬+営業余剰+純間接税+固定資本減耗
として計算されます。
※純間接税は生産・輸入品に課される税-補助金

したがって、労働生産性を単純に算数で分解すると、

労働生産性=就業者一人当たり雇用者報酬
+就業者一人当たり営業余剰
+就業者一人当たり純間接税
+就業者一人当たり固定資産減耗

となります。
純間接税と固定資産減耗は、私たちの直接の生活から増やしたりすることはできませんから、就業者一人当たり雇用者報酬と就業者一人当たり営業余剰を増やすことで労働生産性は上がることが分かります。

日本の労働生産性が低い議論はよく目にしますが、こうやって数式に分解して分析している例はあまりないように思います。
次回は、この算式から読み解く、筆者なりの分析と労働生産性向上の提言をしたいと思います。

年末のご挨拶

日本は間もなく年越しでしょうか。
ただいまプライベートでアメリカに来ています。
時差の関係で、当地はまだあと1日残っております。

当事務所は、彼の地にあってもリモートで、365日24時間営業中です。
お問い合わせはどうぞお気軽にお寄せください

このサイトを通じてブログを読んでくださった方々、そして業務を通じてお世話になった方々に、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。
今年はニュージーランドの大地震に始まって、東日本大震災、タイの大洪水、欧州危機に円高、北朝鮮の政権交代など、 自然災害や政治経済環境の変化の大きい年でした。

来年が皆様にとって良い年となりますよう、遠い地よりお祈り申し上げます。

中小企業の経営-ドラマ「下町ロケット」

WOWOWで放映されたドラマ「下町ロケット」第1回を観ました。
大田区の中小企業、つくだ製作所。高い精密加工技術を売りにしているが、主力製品の技術を大手企業のナカシマ精機から特許侵害で訴えられる。
係争の対象となった製品の供給に不安を覚えた大口得意先からのキャンセル、メインバンクの融資打ち切りで、つくだ製作所は窮地に立たされる。
というストーリーです(第1回まで)。

訴訟に売り上げ減、融資打ち切りと、よくも立て続けに問題が発生するものだとも思いますが、普通、問題は立て続けに発生するものなのです。
当然のことながらビジネスはあらゆる要素が相互連関しており、一つに問題が発生すると連鎖反応が起きるからでしょう。
中小企業の経営に携わったことのある筆者にも経験があります。

ドラマ中では、技術一辺倒で多額の開発費を支出してきた社長への不満も噴出します。
経理部長も開発費の上昇に苦言を呈しますが、「モノづくりの火を絶やさない」と社長は主張します。

長年経理財務に携わってきた筆者が言うのは少し変かもしれませんが、この社長の言葉には大いに賛同します。

多くの中小企業の足元は決して安定していません。
現在も6重苦などと言われますが、海外とのコスト競争に打ち勝つには、確かにコスト削減と、今すぐ日の目を見ない開発費支出を抑制するのは正論と言えるでしょう。

一方、それだけではやはり激しい競争に勝てないのも事実です。
コストダウンだけで他に売り物がない場合には、早晩行き詰まります。自社より高いコスト競争力の企業が世界のどこかに現れたら、すぐに乗り換えられてしまうからです。
いかにコストダウンに努めても、最後はコストを0にはできませんから、必ずどこかに限界があります。

したがって、決して盤石とはいえない中小企業の経営を支えるのは、実は目先のコスト削減ではなくて、高い技術力こそが本当の競争の源泉と言えるでしょう。
そうした技術力を売り物に変える部分こそが苦しいのもまた事実ですが、それを乗り越えることが正に真の競争力の獲得と言えるでしょう。

どのように難局に立ち向かっていくか、ドラマの次回以降が楽しみです。

石原亨選手、2011 ICFカヌーフリースタイル世界選手権ドイツ大会にて、3位に入賞

当事務所がサポートするカヤック(カヌー)のスクォート部門日本代表 石原亨選手(所属:串揚げ ひかりや)。
2011 ICFカヌーフリースタイル世界選手権ドイツ大会にて、惜しくも金銀は逃しましたが3位に入賞しました。
今後のますますの活躍を期待します。

カンニングに見る生産工程とコスト効率

京都大学はじめ幾つかの大学入試のカンニングが問題になっています。

この問題は、入試を一つの生産工程(試験会場という「工場」において合格者という「製品」を作り出す)と考えると、色々な問題を示唆しています。
まず、現代の入試制度は次のような点で大量生産モデルと言えます。
1. 何千人という志願者(原材料)を決められた試験日に一度に投入
2. 試験会場という一つの場所(工場)で、何段階かのプロセスを経て効率的に選抜
3. 何百人という合格者を出す(大量生産)
4. 出題と採点は、ある程度客観的に評価できる(プロセスの標準化、品質基準の標準化)

今回のカンニング事件は、テクノロジーの発達が、大量生産モデルの前提を覆してしまったともいえるでしょう。
すなわち、従来型の試験監督(投入前検査工程)で発見できたはずのカンニング(不良品)の想定を超えるようなカンニングの方法が持ち込まれてしまった(不良品の混入)というわけです。

これについては、一般に次のような対処方法が考えられます。

1. 投入前検査工程を強化する
前回述べましたように、USCPAの試験のような、何物も持ち込ませない厳しい持ち物チェックを行う方法です。
すなわち、生産工程に最初から不良品を投入しない、というやり方です。
この方法は後の工程への負担が少ない方法ですが、最初の検査工程は膨大になり、それなりのコストと時間も掛かるようになります。

2. 投入後検査工程を強化する
どんなに投入前検査工程を強化しても、不良品を0にすることは統計学上も不可能とされています。したがって、一定の不良品は発生するものだと考え、ある程度の不良品の発生は許容するとともに、最終製品段階で排除するという考え方です。
今回のカンニング問題の場合では、持ち込み検査などは強化しない代わりに、採点段階でYahoo!知恵袋などに寄せられた解答例に酷似するものはカンニングとみなして不合格にするやり方が考えられます。
この方法は、前の工程への負担は少ないですが、最終検査工程、すなわち採点段階での負担は大きくなります。

3. バッチサイズを小さくし、少量多品種生産に切り替える
上記の1.と2.のいずれも検査工程の強化にかなりのコストがかかるのは、大量生産を前提としているからです。
すなわち、一度に押し寄せる大量の志願者に対して、カンニングの有無を確認しようとするためにコストがかかるわけです。
そこで、一つ一つの工程のバッチサイズを小さくすれば、一バッチあたりの負担も小さくなります。
今回のカンニング問題の場合では、試験をもっと前から、何回にも分けて実施し、かつ1回あたりの合格者は数十名などもっと少なくする、という方法が考えられます。
この方法は、バッチが小さくなる分、工程の生産回数は増え、生産効率は低下します。しかし、起きうる様々な事象に対応する柔軟性は増します。

大量受験を前提とする場合、会場の確保、大人数の監督人員や採点人員の確保など、リソース確保の課題が多くありますが、3.の解決策では、受験プロセスは面倒になる一方、追加人員の確保は少なくて済みます。
1.や2.の大量生産モデルが装置産業型、大工場モデルだとすると、3.の解決策は、セル生産システム型と言えそうです。

カンニングとUSCPA試験について

京都大学はじめ幾つかの大学入試のカンニングが問題になっています。

物理的にカンニングができるかどうか、という受験環境について、私が受験したUSCPA(米国公認会計士)の試験をご紹介したいと思います。

USCPAの試験は、1年のうち4回まで受験でき、かつその日程は自由に選ぶことができます。
試験会場は、専門に作られた受験センターで、指定のコンピュータによって行われます。
そこへ入室する際には、ポケットの中まで全てロッカーにしまい、入国審査並みに写真と指紋を取ります。
当然のことながら携帯電話の持ち込みはできません。

このような試験形式は、非常にコストがかかるでしょう。1科目当たり百数十ドルという高額の受験料を支払っているからこそ成り立つ形式とも言えます。
ただし、そのような試験のセキュリティ体制は、より厳重な形式を求めるなら一考に値するでしょう。

謹賀新年

旧年中は大変お世話になりました。

景気の先行きはいまだ不透明ではありますが、財務・会計の分野において、皆様の業績向上に貢献し、ひいては少しでも景気の上昇に貢献できればと考えております。

本年もよろしくお願い申し上げます。

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