シャープのキャッシュフローとは

※本記事は、発表された資料のみに基づく推測であり、その実現を保証するものではありません。実際の業績等は様々な要因等により大きく異なる可能性があります。



2012年9月6日、シャープが本社や工場などの土地・建物に対して担保を設定した、という報道がありました



シャープは8月28日に希望退職を発表するなど、リストラを進めている最中ですが、資金繰りについてはここが正念場、といったところでしょうか。



さて、このように報道からすると、なかなか大変な状況にあるようですが、実際のところはどうなのでしょうか。
細部まではもちろん窺い知ることができませんが、これまで公表された資料を基に、シャープの資金繰りを推測してみることにします。



シャープは2012年8月2日に、2012年度(2013年3月31日)の年間業績見通しの下方修正を発表しました
それによると、2012年度の通年の業績は、当初の見通し純利益300億円から一転して、純損失2500億円ということです。
一方、公表された連結財務諸表によると、2012年3月31日現在、現預金残高は1953億円ということでした。
したがって、今の業績見通しに基づいて考えると、2013年3月31日の現預金残高は、1953-2500=547億円のマイナスになってしまいます。

もちろん、会計上の利益に対して、現金支出を伴わない費用というのがあります。いろいろありますが、中でも大きいのは減価償却費です。
業績見通しの発表資料の中に、2012年度の減価償却費見通しは2000億円、とありますので、その分を考慮すれば、2013年3月31日の現預金残高は、-547+2000=1453億円、と1年間で500億円ほど減る計算になります。
500億円減るとはいえ、1453億円あれば、まだだいぶ余裕があるように見えます。



しかし、2012年3月31日現在、短期借入金、1年内償還予定の社債、コマーシャルペーパーといった項目を全て足すと、5854億円もあります。
これらは、2012年度中に返済しなければならないお金なので、1453-5854=4401億円も不足してしまうことになります。



表にまとめると次のようになります。



2012年3月31日現在の現預金        1953億円
今年度中の赤字による現金流出  △500億円(純損失2500億円、うち非現金支出である減価償却費2000億円を除く)
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2013年3月31日現在の現預金        1453億円
短期債務の要返済額                  △5854億円
———————————————————
差引:要借り換え額                       4401億円



もちろん、普通ならば、短期借入金、コマーシャルペーパーといった借金は、いったん返すにしても新たに借り換えれば、実質的には返さなくてよいことになります。



しかし、連日報道されているようにこの状況ですと、金融機関も返済能力については今まで通り、という判断ではいられなくなったかもしれません。


そうすると、まるまる借り換えるということは難しく、やはり一定の金額は返済しなければならないかもしれません。



実は、これまでシャープは土地・建物は担保に入れていませんでした。

2012年3月31日の貸借対照表の注記を見ますと、担保に入れていた資産は有価証券などが194億円、対応する債務は36億円、となっていました。

報道では担保の合計は1500億円とあり、これらに比べるとかなり大がかりな担保と言えます。

今回の担保で幾ら借りることになったかはまだ不明ですが、少なくとも4400億円以上は借り換えないと、来年度末までに資金が枯渇してしまうことになってしまいます。



もちろん、これ以上に事業改革が進み、もしくは業績が回復して状況は改善するかもしれません。上記はあくまでワーストケースということですが、いずれにしてもしばらくは目が離せない状態が続きそうです。

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