Archive for 4月 2012

外資系経理の生活(その9)-勘定科目体系の最近の動向

外資系経理の生活(その8)-ボーナスから続く

簿記の勉強を始めると、最初に悩まされるのが、勘定科目を覚えることです。

何々の費用は◯◯費、と沢山の勘定科目を覚えなければならないのか、と憂鬱になります。

実際は、経理の仕事を始めると、何々の費用は◯◯費、というのは規定で決まっていますし、前に同じような取引があれば、それを参考にしますので、あまり難しいことではありません。

さて、外資系企業の経理というと、今度はそれらの勘定科目が英語になるので、またもう一段難易度が増すように感じられますが、 外資系であってもやはり親会社が定めた規定があるので、それに従っていればそれほど難しいことではありません。

さて、最近ではどこの国の企業もグループ企業の一体化、迅速な経営情報の把握、といった目的から、統一した会計処理を求められるようになりました。勘定科目もその一つです。

親会社への報告は、「連結パッケージ」と呼ばれる、所定の報告様式に記入して送ることが多いです。

以前は、Excelの所定の書類、損益計算書、貸借対照表といった計算書を送る方式になっていましたが、単なる決算書の作成以外のさまざまな経営情報を把握する目的から、内容も細かくなり、また様々な定性情報も求められるようになっています。

勘定科目も多分に漏れず、親会社から詳細な指示(instruction)が送られてきます。最近、幾つかのお客様をお手伝いしていて気づくのは、詳細な勘定科目の使い方まで親会社から指示が来るようになったことです。

一方、勘定科目というのは、その会社の経営を表す鏡でもあることです。会社によって活動の仕方は違いますし、したがって会社によって重視する勘定科目もかなり違います。

これは、同じ企業グループ内であっても、所在する国や、事業分野によってやはり違います。

しかし、最近の動向としては、親会社から与えられる指示が事細かな一方、指示は統一的で例外を認めないことが多くなってきています。

勘定科目を統一することは、親会社の連結決算の統合作業を効率よく進めるだけでなく、連結経営の上でも業績把握を容易にするメリットがあるのですが、一方でローカルの細かな違いを反映できないこともあります。

IFRS導入に際しては、グループ内で勘定科目の統一を行いますが、こうした細かな違いを反映できる工夫も必要です。

ソニーの業績修正-繰延税金資産とは

2012年4月10日、ソニーは2011年の業績について、2月に立てた業績予想よりも3千億円悪化することを発表しました

発表資料によれば、米国などにおける繰延税金資産に対し評価性引当金を計上することなどにより、追加の税金費用約3,000億円を計上することになった、とあります。

これほど大きな影響を与える繰延税金資産とは何でしょうか。

当事務所の別ブログでは、繰延税金資産について簡単に解説しています

繰延税金資産とは要するに、以前に生じた損失の税金相当分を将来に繰り延べることです。

日本には繰越欠損という制度があります。所得上、赤字が生じた年度は税金を払う必要がありませんが、その損失を繰り延べることができ、将来に利益が生じたときに払う税金をそれで賄うことができる制度です。

米国にも同様の制度があります。

報道資料では、繰延税金資産の回収可能性を評価するにあたり数年間にわたる累積損失は重要なマイナス要因とみなされる、とあります。

つまり、過去に繰り延べた欠損金は、将来に利益が生じたときに払う税金で賄うわけですが、将来に生じるであろう利益が少なければ、賄いきれなくなる可能性があるわけです。

繰延税金資産を計上した時は、将来の利益で賄えることが前提となっています。しかし、後々の事業環境の変化によって、将来の利益の予測に変化が生じ、賄いきれなくなると、その分は取り戻せない税金ということで、資産を取り崩す必要が出てきます。

日本、米国をはじめ多くの会計原則では、その評価を毎回行うことを要求しています。

ソニーも、2月の業績発表時は問題なし、と考えられていたものが、数か月経って精査したところ、賄いきれなくなった、という判断になったものと思われます。

マスコミでは、今回の業績修正と繰延税金資産に対する評価の引き当てによる大幅赤字を報道しています。

しかし筆者は、今回の引き当てによる業績悪化よりも、もっと深刻な問題が潜在的にあることを危惧しています。

評価の引き当ては将来の利益で賄いきれなくなったことを意味し、すなわち、将来の利益の見通しが下がったことを意味するからです。

日本の電機メーカーの凋落が巷で語られていますが、暗くなってしまった将来の見通しを何とか引き上げられるよう、頑張ってもらいたいものです。

Facebook

Twitter