Archive for 12月 2011

年末のご挨拶

日本は間もなく年越しでしょうか。
ただいまプライベートでアメリカに来ています。
時差の関係で、当地はまだあと1日残っております。

当事務所は、彼の地にあってもリモートで、365日24時間営業中です。
お問い合わせはどうぞお気軽にお寄せください

このサイトを通じてブログを読んでくださった方々、そして業務を通じてお世話になった方々に、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。
今年はニュージーランドの大地震に始まって、東日本大震災、タイの大洪水、欧州危機に円高、北朝鮮の政権交代など、 自然災害や政治経済環境の変化の大きい年でした。

来年が皆様にとって良い年となりますよう、遠い地よりお祈り申し上げます。

脱税と所得隠しと申告漏れ-東芝子会社のリベート過大計上は本当に悪か?

読売新聞からYahoo!ニュースへの記事で、東芝子会社がリベートの過大計上による所得隠しがあったと報道されました
支払うリベートについて、本来作成されるはずの商談確認書と呼ばれる書類が作成されないまま経費として計上されていたものがあったため、と説明されています。

この報道を読んで、所得隠しと申告漏れを混同しているのではないかと違和感を感じました。

1. 会社の決算と税務申告の違い

会社の決算の数字と税務申告の数字は、実は大きく異なります。
法人税は、税法に従って計算された課税所得と呼ばれる金額に税率を掛けて求めます。しかし、税法の取り扱いと会計の取り扱いが異なることが多く、決算上の利益と課税所得は異なるのです。
報道では、書類が作成されないままリベートを経費にしている点で、いかにも架空の経費を計上したかのように取り上げています。
実際のビジネスの現場では、こういうことはむしろ一般的です。

書類が作成されるのは商談の最後の最後ということもあります。あるいは、年度を締めて実績の数字が固まってから、リベートの計算に入る、ということもあります。
特にリベートというのは、その1年間の商品の販売数が確定してから、数量に応じて値引きをする、というものです。
販売数は大手量販店や小売店などから情報を集め、集計し、間違いがないことを確認して初めて確定します。
そうすると、リベートの根拠となる書類が決算までに間に合わないことがあります。
しかし、決算上は、その期の商売で発生したリベートである以上、そしておそらくは書類手続きさえ整えばそのリベートを支払わなければならない以上、ある程度見積もりの金額を決算に取り込む必要が出てきます。
これは会計基準でも要求されていることで、決して経費の架空計上ではありません。
東芝子会社も、おそらくこの手続きに従って、リベートの見積計上を行っていたのでしょう。
筆者の経験上はむしろそれが普通です。

反対に、リベートの支払いは翌年なのだから、翌年の経費にする、という会計処理を行うと、本来見込むべき、負担の生じている経費を前年の決算に取り込んでいないことになります。こちらの方がむしろ粉飾決算と言えます。

2. 脱税と所得隠しと申告漏れ

これらは本来払うべき税金を払わなかった、という点では同じですが、意図があったかどうかによって悪質性は大きく異なります。

「脱税」というのは、文字通り税金を逃れる目的で、売り上げを隠したり、架空の経費を計上したりして所得を小さくする行為です。
わざと違法行為をしようというのですから、税務当局もこの点は厳しく目を光らせています。悪質な場合は重加算税というペナルティを科すこともあります。
「脱税」と「所得隠し」に明確な定義はありませんが、過去のマスコミ報道から傾向を見ると、「所得隠し」のうち大きなもの、より悪質なものが「脱税」、として取り扱われているようです。

次に「申告漏れ」ですが、これは逃れる意図があってではなく、会社の処理上のミスであったり、会社の判断に基づく申告と、税務当局の考える申告とが異なっている場合に起こります。
特に後者が問題となります。
税務上のルールというものは、実は明確に線引きできないものも多いのです。この点、会社が正しいと判断して行った処理でも、税務当局の見方はそうではない、ということが起こります。
互いの主張が平行線でどこまで行っても譲らない、ということになると、不服審判、あるいは裁判を通じて決着する、ということになります。
実際には、そういう裁判手続の複雑さや長期化を嫌って、会社の方が折れて過去の申告を修正して決着を図ることもあります。

1. で述べたように、決算上の数字と税務申告上の数字は異なります。
今回の東芝子会社の例では、リベートの見積計上を行う一方、申告上もそのまま経費として申告していたように見受けられます。
リベートの見積を申告上も経費としてよいかどうかは、実務上は難しい判断です。
法律上は、債務性のあるものは経費としてよいことになっています。そこで、見積であっても支払いがほとんど確定しているような場合には、経費として申告することもあります。
筆者もそのように経理をした経験があります。
おそらくは、この債務性を巡って、つまりリベートの金額がどのくらい確実なものだったか、ということを巡って税務当局と意見の食い違いがあったのでしょう。

しかし、報道の中でも会社のコメントとして書かれているように、仮装する意図はなかったようですし、最終的にリベートは支出されたということです。
したがって、この件は「所得隠し」ではなく、「申告漏れ」を指摘され、「会社が指摘に応じて修正した」ということだけのように思います。

e-taxでは別表七を電子申告できない

当事務所には10月決算のお客様があり、現在、確定申告を進めているところです。
昨年から本格的にe-taxに移行しましたが、印刷し、どこに判を押していただくかを示し、返信用封筒を用意してお客様にご郵送し、という手間がなくなって、当方もお客様もずいぶん助かっていました。

近々海外へ行く予定があり、少々案件が立て込んでいることもあって、申告は地方税だけ先に済ませ、法人税は海外でゆっくりやれば良いか、などと高をくくっていたのですが、昨日様式を確認していたところ、別表七の欠損金に関する明細が見当たりません。

国税庁のwebによると、平成23年6月30日に法人税法施行規則が改正されたことに伴い、様式の変更が一部間に合っていないとのことです。
平成23年6月30日以後に終了する事業年度又は連結事業年度の法人税の申告にe-Taxを利用する場合のご注意

別表七など様式が用意されていないものについては、別途公開されているPDFにより紙での作成、提出が必要になります。

海外に出発していたら郵送の対応が難しくなるので、事前に気づいてよかったです。

とはいえ、紙の提出がたとえ1枚でも必要になってしまうということは、ひと手間かけなければならず、効率は大きく後退します。
昨年は税務署の担当官からわざわざ電話までかかってきて、「e-taxの推進をよろしく」と言われていたくらいです。
推進する立場の監督官庁の都合で、効率性が後退することになってしまうのは困りますね。

1月上旬には新様式が利用可能になるということです。
筆者自身が持つ有限会社も含め、12月決算は他にも幾つかお客様があるので、12月決算の申告までには間に合ってもらいたいものです。

宝くじは買ってはいけない?

年末ジャンボ宝くじの季節になりました。テレビのCMも盛んに行われています。「当たったら何を買おうか」と胸算用されている方も多いことでしょう。

筆者は宝くじを絶対に買いません。なぜでしょうか。

投資であれギャンブルであれ、その動機というのは、一定の投資の元にリターンを期待するからです。
リターンの額が大きければ大きいほど、良い投資ということになりますが、将来のことは誰にも分かりません。
リターンがあることもあれば、ないこともあります。
投資額を失うこともあります。つまり、宝くじの場合は当たらなかったということになります。

どの程度のリターンが得られるかは、一定の確率によっています。
銀行預金や国債であれば、わずかな利率とはいえ、ほぼ確実にリターンが得られます。つまりリターンが得られる確率は100%に近いでしょう。
株式であれば、長期的にはその会社の将来の収益性の期待によって決まります。
ただし、毎日の株価といったものは、様々な思惑や評判によって乱高下します。
昨今、市場をにぎわすスキャンダルのようなものがあれば、もちろん株価は大暴落しますが、中長期的にその確率をどのように読むかが投資の成功の秘訣と言えるでしょう。
かの大富豪ウォーレン・バフェットは、長期的な投資の視野に優れていると言われています。
この確率の読みが優れているのでしょう。

さて、問題の宝くじはどうでしょうか。

一般に、宝くじの収益還元率は5割以下と言われています。つまり、100円で宝くじを買って、返ってくる当せん金は50円以下、ということです。
実は、「当せん金付証票法」という法律があり、そこでも収益還元率は原則として5割以下、とされています。

「そんな夢のない話を」
「買わなければ当たらないのだから、買い続ければいつかは当たる」
と主張する人もいるでしょう。

統計学に「大数の法則」というものがあります。
発生する条件が一定であれば、母集団が大きければ大きいほど、発生確率は最初に予定された確率に収れんしていく、というものです。

少し難しいことを書きましたが、簡単に言うとこういうことです。
サイコロをランダムに振ります。出た目は1だったり、6だったりするでしょう。
珍しいことですが、10回続けて6が出るかもしれません。
しかし、1千回、1万回、と沢山振っていると、6が出る確率はだんだん1/6に近づいていきます。
もし1/6にならなかったら、そのサイコロは重心が狂っているか、形がゆがんでいると疑ったほうがいいでしょう。

さて、宝くじの場合は、その性質上、抽選方法が厳格に行われています。
衆人監視の元で、回転する円盤に矢を放ちます。
その方法にインチキがあっては大変な騒ぎになりますから、恣意性が入らないように、意図的な操作が行われないように抽選を行います。
この「恣意性が入らない」「意図的な操作が行われない」ことが実はクセモノなのです。
恣意性なく、公平に、偶然に起因するように行えば行うほど、大数の法則により宝くじの当選は当初予定された確率に近くなります。
つまり、5割以下という収益還元率に近づいていくわけです。

初めて1枚買ったら1億円当たった!という人もいるかもしれません。
確率ですから、そういうこともありえます。
しかし、たくさん買えば買うほど、大数の法則によって当初の確率に近づいていきます。
もう何十年も、何枚も買い続けている、という人は、今すぐ買うのを止めたほうがいいかもしれません。

競馬は、馬券発売が締め切られると配当予想が表示されます。
買った人たちの勝ち馬の予想により、ある程度の予想収益還元率が表示されているわけです。
さらに、当日のダートの状態や馬の調子、騎手のリードの仕方などによって、さらに勝率は変わってきます。
この点は、サイコロや宝くじのように、予め確率が決まっていない部分ですので、大数の法則が当てはまりません。

一見、競馬より健全なギャンブルに見える宝くじですが、宝くじを買うよりは、競馬に掛けた方が財務的に健全と言えるかもしれません。
もちろん、競馬を積極的に勧めるものではありません。ギャンブルはほどほどに。

日本経済の再生とは(その2)サービス業の輸出について思うこと

日本経済の再生とは(その1)から続く
プライベートで台湾に来ています。

気候が比較的おだやかなこの時期にほぼ毎年来ています。
羽田から、台北松山空港(市街地に非常に近い)への直行便ができて、非常に便利になりました。

さて、毎年来ていますと様々な変化に気づきます。
その一つが、残念ながら日本の、かつての独壇場であった電機や自動車のプレゼンスの低下です。

定宿にしているホテルの横には、初めて来台した時にはトヨタの販売店が入っていました。
2、3年前に閉まってしまい、しばらく空き家となっていましたが、今年は別のテナントが入居していました。
街中では、以前はパナソニック、ソニーなどの看板が目立っていましたが、どんどん少なくなっているのに気づきます。
ホテルのテレビはまだ何とかパナソニックですが、いつサムソンに変わってしまうでしょうか。

一方、健闘している日本企業もあります。

スーパーでは日本のお菓子がプレミアムブランドとして売られています。
日本でもよく見かける、P&Gのプリングルスやナビスコのオレオクッキーといった欧米系のお菓子もありますが、もっと沢山の日系のお菓子が、しかも相当のスペースで並んでいるとやはり嬉しくなってしまいます。
文房具売り場では、機能性の高い手帳やファイリング類というとやはり日本製でした。日本語の説明書きの付いたものがそのまま普通に売られています。

アジア圏で検討している産業の一つにコンビニエンスストアがあり、ここ台湾でもセブン・イレブンやファミリーマートなどが大活躍です。

今日は非常に寒くなり、何か1枚着るものを、と思って目に入ったのがユニクロでした。
値段も為替換算するとほぼ日本と同じだったので、1枚買い求めました。

街中では日本のB級グルメが若者に人気のようで、日本語のノボリの立ったラーメン屋や居酒屋もよく見かけます。

日本の製造業は少し元気がありませんが、サービス業を中心に輸出が進んでいることには頼もしさを感じます。
サービス業の輸出に関しては、あまり円高は影響しないと想像されます。
製造業は円高でずいぶん苦しめられていますが、その分をサービス業に頑張ってほしいと思います。
今は飲食業の輸出が多いですが、ほかの業種への展開も考えられるでしょう。日本企業の活躍に期待したいと思います。

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