IFRS

金融担当大臣、IFRS強制適用延期

6月21日、金融担当大臣より、IFRSの2015年3月期強制適用は考えておらず、仮に強制適用する場合であっても、決定から5-7年程度の十分な準備期間の設定を行うとするなどの談話が発表されました。
そうすると、仮にあと数ヶ月以内に強制適用を決定したとしても、5-7年の準備期間を考慮すれば、強制適用は早くて2016年3月期、ということになります。
その理由としては、同等性の評価のほか、東日本大震災の影響もあるとされています。

IFRSの導入は検討すべきことも多く、それなりの負担もあるため、大震災の影響を考えますと2015年からの強制適用は現実的に難しい面もあるでしょう。
しかしながら、国際社会において今の日本の置かれた状況をみますと、延期はしても適用の見直しはすべきではないと考えます。
IFRSの導入は産業界を中心に反対が多いと聞きます。確かに、今までの日本の基準とは異なる部分もあり、企業によっては今の財政状態が大きく変わってしまう、というところもあるでしょう。

現在の日本の基準は一昔前に比べるとかなりIFRSに近付いています。IFRSの強制適用とは別に、これからも少しずつ国際社会の潮流に合わせた変更は行われていくものと考えられます。

また、IFRSを導入する/しないという、それ自体が企業の本当の実態を変えてしまうわけではありません。
そもそも、会計基準というものは、企業の実態を測るモノサシに過ぎません。
たとえば、反対意見の焦点の一つである時価主義も、仮に時価主義を導入しなかったとしても、企業が持っている資産や負債そのものが持っている価値とその下落リスクがなくなってしまうわけではなく、財務諸表に表れてこない、というだけに過ぎないのです。
会計基準の違いの背後には、理論的背景やその社会のもつ文化的背景なども左右しますが、現代のように企業が様々な形で国際社会と関わりを持つ時代では、すべての企業が同じ基準で測定され、同じ土俵に乗る、ということが必要と思われます。

震災と前後して、既に”日本パッシング”が始まりつつあることも気になる点の一つです。
天然資源に乏しく、かつ国内市場も成熟期を迎えつつある我が国は、国際社会との関わりなしに存立できません。
その中で、我が国の企業が独特の会計慣行の下で作られた財務諸表に寄っているということは、今後の日本の企業活動の道を狭めてしまうことを筆者は恐れます。

国際資本市場で資金調達しない会社にまで強制適用すべきでない、という意見もありますが、全ての企業は何らかの形で他人資本に頼っており、その資本の出し手の裏にはさらに別の資本があって、今日のような複雑な資本市場では、間接的には世界中が資本家、とも言えます。
日本が独特の会計慣行の下に留まるとすると、日本を嫌忌する資本家が流出し、それはひいては、国内資本(と思っているもの)の減少につながることもありえます。

今回の談話は、単に震災の影響から導入を延期している現実的対応としてであって、国際潮流の中で日本が取り残されないよう、引き続き国際化の検討を進めてほしいと筆者は考えます。

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