Archive for 8月 2011

中小企業の経営-ドラマ「下町ロケット」

WOWOWで放映されたドラマ「下町ロケット」第1回を観ました。
大田区の中小企業、つくだ製作所。高い精密加工技術を売りにしているが、主力製品の技術を大手企業のナカシマ精機から特許侵害で訴えられる。
係争の対象となった製品の供給に不安を覚えた大口得意先からのキャンセル、メインバンクの融資打ち切りで、つくだ製作所は窮地に立たされる。
というストーリーです(第1回まで)。

訴訟に売り上げ減、融資打ち切りと、よくも立て続けに問題が発生するものだとも思いますが、普通、問題は立て続けに発生するものなのです。
当然のことながらビジネスはあらゆる要素が相互連関しており、一つに問題が発生すると連鎖反応が起きるからでしょう。
中小企業の経営に携わったことのある筆者にも経験があります。

ドラマ中では、技術一辺倒で多額の開発費を支出してきた社長への不満も噴出します。
経理部長も開発費の上昇に苦言を呈しますが、「モノづくりの火を絶やさない」と社長は主張します。

長年経理財務に携わってきた筆者が言うのは少し変かもしれませんが、この社長の言葉には大いに賛同します。

多くの中小企業の足元は決して安定していません。
現在も6重苦などと言われますが、海外とのコスト競争に打ち勝つには、確かにコスト削減と、今すぐ日の目を見ない開発費支出を抑制するのは正論と言えるでしょう。

一方、それだけではやはり激しい競争に勝てないのも事実です。
コストダウンだけで他に売り物がない場合には、早晩行き詰まります。自社より高いコスト競争力の企業が世界のどこかに現れたら、すぐに乗り換えられてしまうからです。
いかにコストダウンに努めても、最後はコストを0にはできませんから、必ずどこかに限界があります。

したがって、決して盤石とはいえない中小企業の経営を支えるのは、実は目先のコスト削減ではなくて、高い技術力こそが本当の競争の源泉と言えるでしょう。
そうした技術力を売り物に変える部分こそが苦しいのもまた事実ですが、それを乗り越えることが正に真の競争力の獲得と言えるでしょう。

どのように難局に立ち向かっていくか、ドラマの次回以降が楽しみです。

外資系経理の生活(その8)-ボーナス

外資系経理の生活(その7)-年間見通しから続く

前回では、外資系企業のボーナスの特徴について述べました。

しかし、日本の商習慣上、外資系といえどもやはり日本の会社と同じような賞与体系にしないといけない人事戦略上の事情もあるようです。
したがって、外資系の多くは、年俸制といいながらも、その年俸を16分割し、毎月の給与は1/16を支給し、夏冬はボーナスと称してそれぞれ2/16を支給しているケースも多いようです。
もしくは15分割し、夏2か月冬1か月というケースもあるでしょう。
いずれにせよ、夏冬のボーナスは、年俸制の一部として支給されているケースが多いということです。
これとは別に業績連動型のボーナスがあり、年度の業績に応じて、更に何か月分かが支給されるようになっています。

さて、外資系経理を担当していると、親会社との間で議論が噴出するのが、このボーナスのあり方です。
親会社への報告書では大抵、夏冬の支給分も、業績連動型のボーナスも、両方ともbonusとして報告するケースが多いようです。

親会社としては、業績が良いときに支給するのがボーナス、という考え方に基づいていますので、好業績の時は問題ないのですが、業績がよくないときに、このボーナスに目を付けます。
いわく、業績が悪いときにボーナスを計上するのはどういうことか、と。

会社の社員としては、夏冬のボーナスは単に年俸の分割であって、本当の意味のボーナスは業績連動型の部分だけです。
業績が悪いときに、業績連動型を減らされるのは納得がいきますが、夏冬ボーナスまで減らされるのは減給となり納得がいきません。

筆者が勤めてきた幾つかの外資系企業では、必ずと言っていいほどこの問題が出ました。
「夏冬のボーナスは給与の一部」と説明して、一時は納得してもらっても、しばらく時間が経ったり、担当が変わったりするとまた議論の蒸し返しとなります。

会計報告上も夏冬のボーナスについては、「季節給与」といった名目とし、業績連動型部分のみを「ボーナス」として報告しておいた方が無難かもしれません。

外資系経理の生活(その9)勘定科目体系の最近の動向に続く

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