Archive for 3月 2012

為替予約の目的とは

一時の円高もだいぶ沈静化してきたようです。輸出企業にとっては、ようやく一息つけた、というところでしょうか。
しかし、この先円安傾向が続くのか、再び円高に戻ってしまうのかは分かりません。財務担当者にとっては、利益計画や資金計画が立てづらいところです。
例えば、輸入企業が10,000ドルの商品を3ヶ月後に支払の約束で仕入れたとします。 日本国内の得意先には、80万円で売れるとしましょう。
そうすると、3ヶ月後のレートが1ドル75円ならば、仕入原価が75円*10,000円=75万円となりますから、5万円の儲けがでることになります。
しかし、反対に1ドル85円になってしまうと、仕入原価は85万円となり、5万円の損になってしまいます。
3か月後の為替が幾らになるかは分かりません。利益が出るか損になるか、受け取る資金が幾らになるか見込みが立たないと、利益計画や資金計画も立ちません。
これを防ぐ方法に、為替予約があります。

為替予約とは、銀行などと契約して将来の外貨建の決済のレートを今決めてしまうことです。

たとえば、3か月後の決済レートが今78円で予約できるとしましょう。ここで予約すれば、3か月後の決済代金は78円*10,000円=78万円となり、2万円の儲けが確実に出ることになります。
もしかしたら78円よりも円高に進み、もっと儲かるのかもしれませんが、藪の2羽より手中の1羽、確実に2万円の儲けが手にできるならばその方が良いかもしれません。
それなら、60円で予約すれば、相当に儲かるはずですが、そうは上手くいきません。為替予約レートは、好き勝手に設定できるものではなく、期間によってある程度決まってしまいます。一般には、現在の実勢レートに金利をプラスしたもの、と理論的には考えられています。
結局のところ、為替予約についても、将来のレートは固定できるものの、幾らで固定するか、ということについては、今のレートの変動の影響を受けてしまいます。
そこで、どのようなタイミングで為替予約をすべきか、という疑問が生じます。
これについては、為替予約の本来の目的を考えれば、外貨建ての取引が生じたら、すぐに予約するのが正しい、ということになります。
先に述べたように、為替予約の本来の目的は、将来の損益を今確定させてしまうこと、つまり将来の為替の変動を今固定してしまうことです。言い換えると「リスクヘッジ」ということです。
同じ為替予約をするにしても、なるべくなら有利なレートに進んだ時に予約したい、と思うのは人情ですが、予約を先延ばしすればするほど、確かに有利なレートになる可能性もあれば、反対に不利なレートに進む可能性も出てきます。つまり、不確実性が増えてしまうわけです。
取引のたびに、「幾らあたりが最も有利なレートか」「もう少し様子を見ようか」などと”相場読み”を始めますと、不確実性が増え、もしかするとせっかくの予約の機会を逃してしまうこともありますので、外国為替の取引が発生したら、「何時何時までに予約する」といったルールをあらかじめ決め、後はルールに従って着実に実行することが必要です。
為替予約をした後で、予約レートよりも実勢レートが有利に進んだとき、「予約しないでいればもっと得をしたじゃないか」と批判する人がいます。
相場というものは、振り返れば何とでも言えるものですが、では将来の相場は読めるのか、といえば、完璧に将来の相場を読める人などいません。
そのような批判については、「もしかしたら反対方向に為替が進んで、大損をしていたかもしれないのですよ」「そういう不確実性を取り除くのが為替予約の本来の目的です」というようにしています。
なお、為替予約の実行の仕方によっては、決算時の処理に様々な影響を与えることがあります。
また、数年前の大量の為替予約を巡って、現在多額の含み損を抱えている例もあります。この点についてはまた別の機会に解説します。

自分で確定申告、今から始めるツボ(その1)

確定申告がようやく終わりました。
私のように本業にしている者でも、何かと気ぜわしく、かつ面倒なことも多いのですから、普通の方々にとってはさぞ大変なことでしょう。
Facebookでも、「やっと確定申告が終わった!」という投稿をよく見かけました。それほど一大イベントなのです。

今年の確定申告を終えて、「ああすれば良かった」「こうしておけば良かった」という反省点も多いことでしょう。そこで、来年の確定申告に向けて、「こうしておいたら良いですよ!」というポイントを幾つかご紹介します。

今回ご紹介するのは、白色申告の事業所得申告者向けの内容です。
「白色申告」というのは、「青色申告」ではない普通の申告で、特に青色申告の届を出していない限り、普通の方はこちらの白色申告となります。
「事業所得」というのは、何か事業を営んでいる場合に申告するものです。本業で何かのご商売を営んでいる方、あるいは会社にお勤めでお給料をもらっているけれど副業をなさっている方、はこれに該当します。
それでは、幾つかコツをご紹介しましょう。

1. 今からでも領収書やメモを残そう

年に一度の確定申告ですが、その時に一度に済まそうとすると大変です。
「白色申告」では、必ずしも帳簿をつける必要はないのですが、領収書などは今からでも保管するようにしましょう。また、領収書をもらっていないものでも、メモを残しておきましょう。
「領収書がなければ経費として認められない」という説がありますが、必ずしもそうではありません。もちろん、架空の経費はいけませんが、本当に事業のために支出したものならば、経費として認められますので「いつ」「どこで」「何に」「幾ら」支出したかのメモを残しておきましょう。

2. 領収書はなるべく種類別にまとめよう

確定申告の時は、費用ごとにまとめて保管しましょう。
たとえば、仕入れに使ったものや、交通費、業者さんに支払った外注費、交際費などはそれぞれ別に束ねておきます。

3. 電気代、ガス代、水道代なども忘れず取っておく。

自宅兼店舗で、水道光熱関係の契約が一緒だったり、あるいは自宅で作業をしているときは、一定の割合で経費として認められるので、これらも忘れずに、種類別に取っておきましょう。
「一定の割合」とは、事業にどのくらい使ったか、の割合です。たとえば、サラリーマンが夜に自宅で副業している場合で、毎日2時間くらい作業しているなら、経費は20分の1くらいにする、などです(2/24時間、1LDKのうち、1部屋を作業に使っている、など)。

4. 領収書の金額欄に印をつける

これは、やっておくと意外に後で計算が楽なコツです。「領収金額」の部分を赤ペンで丸く囲っておくか、マーカーペンで印をつけます。こうしておくと、後で集計するときに、金額が一目でわかります。
多くのレシートは感熱紙を使っており、蛍光ペンを塗ると色が変わってしまうことがあるのでご注意ください。

5. なるべくなら、束にまとめるだけでなく、台紙に貼りつける

束にしておくと、集計するときもいちいちめくらなければなりませんし、紛失してしまう可能性もあります。なるべくなら、紙に貼っておきましょう。
立派なスクラップブックをわざわざ買う必要はありません。普通のノートで十分ですし、不要な紙の裏に貼ってもかまいません。
綴じられたノートに貼るよりは、ルーズリーフのようなノートか、不要な紙の裏(なるべく大きさはA4など一つに統一しましょう)に貼って、バインダーに綴じたほうが良いです。種類別にまとめやすくなりますし、後で集計するときに、家族みんなで手分けすることもできます。お子さんの計算練習になるかもしれません。

6. 医療費や薬代、交通費を別にまとめる

1年間の総額が10万円を超える場合など、医療費分を控除できる場合があります。最終的に控除できる最低金額に満たないこともありますが、一応、取っておいた方がいいでしょう。交通費なども認められます。
詳しくはこちら
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1122.htm

7. 売り上げはこまめにつける

特に小口の売り上げが沢山ある方は、分からなくなってしまいがちですので、売り上げがあった時はこまめにつけるようにしましょう。

1年分をためると大変ですので、今からでも始めてみましょう。2012年も既に3か月が過ぎようとしています。

付加価値とは〜製造業の付加価値低下とその意味

2012年3月12日付日経新聞に、製造業の付加価値の低下に関する記事がありました。

この付加価値とは何でしょうか。

経済産業省は、企業活動に関する統計を発表しています。
平成22年度の状況は下記のリンクの通りです。
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/result-2/h22kakuho.html
経済産業省によると、

付加価値額=営業利益+ 減価償却費+給与総額+福利厚生費+動産・不動産賃貸料+租税公課

と定義されます。

機関によって様々な定義がありますが、一般には、企業の売り上げのうち、他社が生産した部分を除く、自社の経営資源が生み出した部分、と言えるでしょう。

そうすると、これが低下している、ということは、自社の経営資源が生み出した部分が減っている、ということにつながります。

すなわち、厳しい見方をすれば、企業の生産活動が社会であまり評価されていないことになります。

もっと厳しい見方をすれば、例えば営業赤字が続き、給与総額や賃貸料なども上回る状態だと、付加価値額はマイナスとなり、社会にもマイナスの価値をもたらしている、ということになります。

では、付加価値を高めるにはどうしたら良いでしょうか。

月並みな表現ですが、利益を高める、ということに尽きます。上の式をみれば明らかなように、利益、特に営業利益を上げれば付加価値は上がります。

このとき、給与やボーナスをカットしたり、リストラをしてはいけないことになります。

上の式では給与総額の低下につながり、 利益の向上を相殺してしまうからです。

したがってそれ以外の部分、すなわち売り上げを増やすか、仕入を含む経費を減らすことが望ましいことになります。

今の世の中、売り上げを増やすのは大変ですが、自社の製品やサービスに対して、高い値段を払ってもよい、あるいは沢山買いたい、と思わせる仕組みが必要、ということになります。

前者で成功しているのが、日本企業ではありませんが一つの例としてアップルが挙げられるでしょう。

反対に、昨今の業績発表で紙面を賑わせている、日本の家電メーカーやエレクトロニクス企業はいずれも、大幅赤字->リストラ、と、付加価値の面では悪化方向に向かっています。

さて、なぜ付加価値の向上が必要なのでしょうか。企業はそれぞれ、利益(最終利益)が上がればそれで良いのではないでしょうか。

ここで注目したいのは、国内所得、すなわちGDPの計算です。

厳密には多少違いがありますが、GDPは家計と企業の付加価値の合計、とされます。したがってGDPが向上するには、各企業が頑張って、付加価値を向上させないといけないのです。

GDPが向上して景気が良くならないと、それぞれの企業の業績も上向きませんが、 それには一つ一つの企業の付加価値向上の努力が不可欠、ということになります。

何だか、ニワトリが先かタマゴが先か、の循環論法に入ってしまいましたが、景気回復には起死回生の秘策などなく、一つ一つの力の結集が必要なのかもしれません。

もちろん、政府部門がその足を引っ張ることなく、円滑に回るような政策にしなければならないことは、言うまでもありません。

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