為替予約の目的とは

一時の円高もだいぶ沈静化してきたようです。輸出企業にとっては、ようやく一息つけた、というところでしょうか。
しかし、この先円安傾向が続くのか、再び円高に戻ってしまうのかは分かりません。財務担当者にとっては、利益計画や資金計画が立てづらいところです。
例えば、輸入企業が10,000ドルの商品を3ヶ月後に支払の約束で仕入れたとします。 日本国内の得意先には、80万円で売れるとしましょう。
そうすると、3ヶ月後のレートが1ドル75円ならば、仕入原価が75円*10,000円=75万円となりますから、5万円の儲けがでることになります。
しかし、反対に1ドル85円になってしまうと、仕入原価は85万円となり、5万円の損になってしまいます。
3か月後の為替が幾らになるかは分かりません。利益が出るか損になるか、受け取る資金が幾らになるか見込みが立たないと、利益計画や資金計画も立ちません。
これを防ぐ方法に、為替予約があります。

為替予約とは、銀行などと契約して将来の外貨建の決済のレートを今決めてしまうことです。

たとえば、3か月後の決済レートが今78円で予約できるとしましょう。ここで予約すれば、3か月後の決済代金は78円*10,000円=78万円となり、2万円の儲けが確実に出ることになります。
もしかしたら78円よりも円高に進み、もっと儲かるのかもしれませんが、藪の2羽より手中の1羽、確実に2万円の儲けが手にできるならばその方が良いかもしれません。
それなら、60円で予約すれば、相当に儲かるはずですが、そうは上手くいきません。為替予約レートは、好き勝手に設定できるものではなく、期間によってある程度決まってしまいます。一般には、現在の実勢レートに金利をプラスしたもの、と理論的には考えられています。
結局のところ、為替予約についても、将来のレートは固定できるものの、幾らで固定するか、ということについては、今のレートの変動の影響を受けてしまいます。
そこで、どのようなタイミングで為替予約をすべきか、という疑問が生じます。
これについては、為替予約の本来の目的を考えれば、外貨建ての取引が生じたら、すぐに予約するのが正しい、ということになります。
先に述べたように、為替予約の本来の目的は、将来の損益を今確定させてしまうこと、つまり将来の為替の変動を今固定してしまうことです。言い換えると「リスクヘッジ」ということです。
同じ為替予約をするにしても、なるべくなら有利なレートに進んだ時に予約したい、と思うのは人情ですが、予約を先延ばしすればするほど、確かに有利なレートになる可能性もあれば、反対に不利なレートに進む可能性も出てきます。つまり、不確実性が増えてしまうわけです。
取引のたびに、「幾らあたりが最も有利なレートか」「もう少し様子を見ようか」などと”相場読み”を始めますと、不確実性が増え、もしかするとせっかくの予約の機会を逃してしまうこともありますので、外国為替の取引が発生したら、「何時何時までに予約する」といったルールをあらかじめ決め、後はルールに従って着実に実行することが必要です。
為替予約をした後で、予約レートよりも実勢レートが有利に進んだとき、「予約しないでいればもっと得をしたじゃないか」と批判する人がいます。
相場というものは、振り返れば何とでも言えるものですが、では将来の相場は読めるのか、といえば、完璧に将来の相場を読める人などいません。
そのような批判については、「もしかしたら反対方向に為替が進んで、大損をしていたかもしれないのですよ」「そういう不確実性を取り除くのが為替予約の本来の目的です」というようにしています。
なお、為替予約の実行の仕方によっては、決算時の処理に様々な影響を与えることがあります。
また、数年前の大量の為替予約を巡って、現在多額の含み損を抱えている例もあります。この点についてはまた別の機会に解説します。

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