ソニーの業績修正-繰延税金資産とは

2012年4月10日、ソニーは2011年の業績について、2月に立てた業績予想よりも3千億円悪化することを発表しました

発表資料によれば、米国などにおける繰延税金資産に対し評価性引当金を計上することなどにより、追加の税金費用約3,000億円を計上することになった、とあります。

これほど大きな影響を与える繰延税金資産とは何でしょうか。

当事務所の別ブログでは、繰延税金資産について簡単に解説しています

繰延税金資産とは要するに、以前に生じた損失の税金相当分を将来に繰り延べることです。

日本には繰越欠損という制度があります。所得上、赤字が生じた年度は税金を払う必要がありませんが、その損失を繰り延べることができ、将来に利益が生じたときに払う税金をそれで賄うことができる制度です。

米国にも同様の制度があります。

報道資料では、繰延税金資産の回収可能性を評価するにあたり数年間にわたる累積損失は重要なマイナス要因とみなされる、とあります。

つまり、過去に繰り延べた欠損金は、将来に利益が生じたときに払う税金で賄うわけですが、将来に生じるであろう利益が少なければ、賄いきれなくなる可能性があるわけです。

繰延税金資産を計上した時は、将来の利益で賄えることが前提となっています。しかし、後々の事業環境の変化によって、将来の利益の予測に変化が生じ、賄いきれなくなると、その分は取り戻せない税金ということで、資産を取り崩す必要が出てきます。

日本、米国をはじめ多くの会計原則では、その評価を毎回行うことを要求しています。

ソニーも、2月の業績発表時は問題なし、と考えられていたものが、数か月経って精査したところ、賄いきれなくなった、という判断になったものと思われます。

マスコミでは、今回の業績修正と繰延税金資産に対する評価の引き当てによる大幅赤字を報道しています。

しかし筆者は、今回の引き当てによる業績悪化よりも、もっと深刻な問題が潜在的にあることを危惧しています。

評価の引き当ては将来の利益で賄いきれなくなったことを意味し、すなわち、将来の利益の見通しが下がったことを意味するからです。

日本の電機メーカーの凋落が巷で語られていますが、暗くなってしまった将来の見通しを何とか引き上げられるよう、頑張ってもらいたいものです。

Comments are closed.

Facebook

Twitter