今回は、前にも一度説明したキャッシュ・フローをもう少し細かく見ていくことにしましょう。
図は、前回でも紹介した、倒産してしまった不動産会社のキャッシュ・フロー計算書です。
色々な項目が並んでいますが、特に注目したいのは、(税金等調整前)当期純利益、減価償却費、売上債権の増減額、たな卸資産の増減額、法人税等の支払額、です。
まず、多くのキャッシュ・フロー計算書は、当期純利益からスタートします。
しかし、利益=キャッシュ・フローではないことに注目してください。
利益が十分にあっても、最後のキャッシュ・フローが少なくなっていると、キャッシュに結びつかない利益であることが分かります。これが悪化すると黒字倒産になってしまいます。
次に、減価償却費を足していることに注目しましょう。
減価償却費というのは、設備などを購入して、その購入代金=コストを使用期間に渡って分割して費用にするものです。
つまり、減価償却費の場合は、キャッシュの支出はずっと前にあり、減価償却の分だけ利益を押し下げているので、ここで足し戻しています。
次に注目したいのは、売上債権の増減額です。売上債権は、得意先からまだ回収していない売上代金ですが、貸借対照表でみたように、売上債権が増減すると、必ずどこかに影響が出ます。
売上が大幅増なら、利益もそれに従って大きく増えることが期待されます。しかし、代金回収に至らないと、キャッシュの入りは少なくなります。その分、利益から引かなければなりません。
売上債権増が、キャッシュ・フロー上は反対にマイナスになっているのはそういう訳です。
同様に、たな卸資産の増減額も注目しましょう。
たな卸資産、すなわち在庫を増やすには、一般には資金が必要です。従って、たな卸資産の増加は、キャッシュ・フローにはマイナスと成ります。
売上債権とたな卸資産の増加がキャッシュに与える影響から、次のことが分かります。
事業が拡大しているときは、売上が増え、それに伴って売上債権やたな卸資産が増えます。
上で見たように、これらが増えると両方ともキャッシュ・フローの減少原因になります。
事業拡大時には、それを支える資金が必要なのですが、この落とし穴にはまって黒字倒産を迎えてしまうことがあるので注意が必要です。
最後に、法人税等の支払額にも注目しておきましょう。
当然のことですが、利益が上がれば税金を払わなければなりません。
しかも、納税額が確定したら、現金で支払わなければなりません。
ここにも、キャッシュ・フローの落とし穴があります。
利益は大きいが、キャッシュ・フローを伴わない状態のときは、利益に対して税金が掛かりますので、資金負担が増えます。
ただでさえ、キャッシュ・フローが少ないときに、税金、しかもキャッシュでの負担は大きいです。
利益が出て喜ぶだけでなく、キャッシュを伴っているか、利益増が却ってキャッシュの負担になっていないか、に注意する必要があります。
Pingback: 第6回 貸借対照表-借入金の急激な変動に注意 | 専門用語を極力使わない!よくわかる決算書
Pingback: 第8回 キャッシュ・フロー-身の丈に合った投資とは? | 専門用語を極力使わない!よくわかる決算書