前回は、損益計算書のうち、ビジネスの大きさが分かる「売上高」と、儲けである「営業利益」「当期純利益」について解説しました。
今回は、「キャッシュ・フロー」を見てみましょう。
「キャッシュ・フロー」とは一言でいうと、現金の流れです。
会社にとって、現金は命、とよく例えられます。
会社は現金がなくなってしまえば終わりです。
「黒字倒産」という言葉があります。
会社がどんなに利益が出ていても、現金がなくなってしまうと会社がつぶれてしまうことを指しています。
反対に、「こんな赤字会社がよく生き残っているな」と思うこともあります。それは、赤字であっても誰かがお金を貸したり、出資したりして支えているからです。言い換えると、赤字であっても現金が続く限りは会社は生き延びることができます。
その、会社の現金の流れを知ることができるのが、「キャッシュ・フロー計算書」です。
現金の残高だけならば、「貸借対照表」を見れば載っています。
前期と当期を比較すれば、現金が増えているか、減っているかも分かります(「貸借対照表」の読み方は次回以降でご説明します)。
しかし、どうして現金が増えている/減っているのか、貸借対照表と損益計算書だけでは、その原因を知ることはできません。
これを分かるようにしたのが「キャッシュ・フロー計算書」です。
金融庁による公開情報EDINETより再構成。
キャッシュ・フロー計算書は、まず下から見ていくとよいでしょう。
まず、一番下の行、「現金及び現金同等物の期末残高」は、その記載通り、期末の現金の残高を表しています。
次に、下から3番目の行、「現金及び現金同等物の期首残高」は、その記載通り、期首の現金の残高を表しています。
したがって、下から4番目の行、「現金及び現金同等物の増減額」がその差、つまり現金の増減になっていることに注目してください。
(ここでは「新規連結に伴う現金及び現金同等物の増加額」も含まれていますが、特殊なケースです)
上記の例では、当連結会計年度の現金は+308億円と、大幅に増加していることが分かります。
その、現金の増減の原因を構成しているのが、上に書かれている
「営業活動によるキャッシュ・フロー」「投資活動によるキャッシュ・フロー」「財務活動によるキャッシュ・フロー」の3つです。
(さらに、海外の子会社があるときは、「現金及び現金同等物に係る換算差額」という項目も出てきます)
「営業活動」は、文字通り営業から生じるキャッシュ・フローです。
これが黒字ならば、とりあえず本業は順調といえるでしょう。
上記の例では、当連結会計年度は886億円の現金を稼ぎ出しています。
仮にここが赤字ですと、本業で現金が持ち出しになってしまっていることを表します。
赤字は、必ずしも悪いとは言い切れません。
事業の特殊性で、在庫を先に大量に確保しなければならなかったり、客先からの代金を回収するのに長い時間がかかるときは、赤字になることもあります。
「投資活動」は、主に設備や土地を購入/売却することから生じるキャッシュ・フローです。
設備以外にも、保証金を入れたり、ソフトウェアなどに投資したり、別の会社に投資することも含まれます。
ここは通常は赤字であることが多いです。普通に投資をしていれば、出ていくお金の方が大きいからです。
上記の例では、当連結会計年度は233億円の現金を投じていることになります。
仮に、ここが「営業活動」を超えるような赤字だと、かなり積極的な投資を行っていると見ることができます。
反対に、何か大きな設備や土地、あるいは子会社などを売って、まとまったお金が入ると黒字になることもあります。
「財務活動」は、「営業活動」と「投資活動」を支える資金を調達したり、返したりすることを表しています。
「財務活動」の赤字が大きいときは、「営業活動」や「投資活動」で稼いだ現金をさかんに返していることを意味しています。
上記の例では、当連結会計年度は288億円の現金を返したことになります。
手持ちの現金が多すぎ、目先の投資案件があまりないとき、借金を返したり、あるいは株主に現金を返す(配当したり、減資する)こともあり得ます。
「財務活動」の黒字が大きいときは、「営業活動」や「投資活動」を支える現金を沢山調達している状態を意味しています。
「キャッシュ・フロー計算書」は本来、「営業活動」「投資活動」「財務活動」のそれぞれの内訳についても詳しく書かれています。
それらを分析すると、さらに詳しい原因を分析することができますが、その解説は次回以降にゆずります。
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