前回は、会社の命ともいえるキャッシュ・フローの流れをつかむ「キャッシュ・フロー計算書」を見ました。
今回は、貸借対照表について説明します。
貸借対照表を見ると、決算期時点でその会社がどういう状態にあるかを読み取ることができます。
細かく見ていくと、沢山のことが分かるのですが、危ない兆候が出ていないか、一目で見るべきポイントをいくつかご紹介します。
この決算書は、数年前に破たんした、とある会社の貸借対照表です。
金融庁による公開情報EDINETより再構成。
会社が健全である場合には、どこがどのように健全か、何が成長の源泉になっているか、見るべきところはいろいろ変わってきます。
反対に、会社が危なそうなときには、「あれ、大丈夫かな」と思うようなポイントが幾つかあります。
1番目のポイント-売上代金と在庫、借入れ
1番目のポイントは、売上代金と在庫です。
会社の多くは、現金商売ではなく、あとで売上代金を回収する仕組みになっています。その、あとで回収する売上代金は、「受取手形」「売掛金」という項目で表されています。
この数字は、売り上げたものの、まだ代金をお客さんから回収していない、ということを意味しています。
会社の大きさに比べて、この数字が異様に大きいと、大丈夫かな?と思います。
もちろん、回収までの時間が非常に長い、という特殊な業界も存在します。
それでもここがあまりに大きいと、「なぜそんなに未回収が多いのだろう?」と疑問を持ちます。
次に在庫を見ましょう。ここも同じように、金額が大きいと、大丈夫かな?と思います。
こちらも、もちろん売れるまでの時間が非常に長い、という業界も存在します。
それでも、在庫があまり大きいと、「仕入れたり、製造したのはいいが、売れ残っている可能性があるのではないか」と疑問を持ちます。
この会社の例では、売上代金、すなわち受取手形及び売掛金はそれほど大きくはないものの、在庫がかなり大きいと分かります。
その次に、支払手形と買掛金を見ます。
これは、上で説明した在庫を売るために、仕入れた代金のうちまだ支払っていないものです。
この金額が大きいと、いずれは仕入れ先に払わなければならないお金が相当あることを表しています。
その資金は、上で説明した売上代金を回収してくるか、あるいは残った在庫を売ってさらに代金を回収するか、あるいは借りてこなければならないわけです。
合わせて、借入金も見ておきます。借入金には、短期と長期があるのですが、特にここでは短期を見ます。
短期借入金は、すぐに(会計のルールでは1年以内に)返さなければならない借入です。
そこで、上記の支払手形と買掛金、借入金を合わせると、どれだけお金を支払わなければならないかがある程度分かります。
この会社の例では、借入金がかなり大きいことが分かります。
在庫をかなり抱えている一方、借入も大きいわけです。
2番目のポイント-「その他」
2番目のポイントは、「その他」です。
「その他」とは文字通りその他、であって、いろいろなものが含まれています。いろいろなものですから、通常はその金額が大きくなることはあまりありません。
しかし、ここが大きくなっていると、何か特別な理由がある、ということになります。
もし大きい場合は、もう少し掘り下げてみる必要があります。
この会社の例では、「その他」はそれほど大きくはありません。
3番目-評価・換算差額
3番目のポイントは、「評価・換算差額」です。
「含み益」または「含み損」という言葉があります。厳密にいうと違うのですが、概して「含み益」や「含み損」に相当するものがここに含まれています。
ここがマイナスの場合、「含み損」であることを表しています。大きな金額でなければ問題ありませんが、「利益剰余金」を上回るようだと、実質的には今までの利益の蓄積を食いつぶしてしまっている状態といえます。
もちろん、これらに挙げるポイントが悪い数字になっているからといって、即、その会社が危ない、ということはありません。
何かしら理由があるはずで、掘り下げて調べていくことで、その理由もある程度分かってきます。
そうした掘り下げをするときに、やみくもに調べるのではなく、これらのポイントから始めることで、兆候をつかみやすくすることができるでしょう。
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