前回は、一株当たりで考えるということで、一株当たり利益や純資産と株価についてご説明しました。
今回は、決算書の財務情報を少し離れ、会社の経営を担う人々や株主構成について知る方法です。
大王製紙の不正事件は一定の収束を見たようです。それにしても、第三者委員会の報告書でも述べられていた通り、オーナー一族の支配権は相当のものだったのでしょう。
それでは、いったいオーナー一族はどれほど株式を持っていたのでしょうか。
上場会社は全て、法律により「有価証券報告書」という書類を提出することが義務付けられています。
この有価証券報告書は、誰でも見ることができます。以前は大手書店で1冊幾ら、で売られていましたが、現在は、EDINETというwebサイトで見ることができます。ユーザー登録も不要で、もちろん無料です。
世間でよく知られている名前でなく、正式な会社名で検索する必要がある(「ユニクロ」を経営するのは「ファーストリテイリング」)など、少しコツがありますが、情報に制約はありません。
実際に、有価証券報告書を開いてみると、左に見出しが表示され、右にその本文が表示されます。
最初に、「第一部 企業情報」「第1 企業の概況」と続き、「主要な経営指標等の推移」には、これまでご紹介してきた主要な財務の数値がダイジェストとして表示されています。
「沿革」を見ますと、会社のこれまでの歩みが描かれています。会社の歴史を見るようで、興味深いです。
また、「従業員の状況」を見ると、平均年齢や平均給与が書かれています。あくまで平均なので、全体を代表しているわけではありませんが、若い会社かどうか、ベンチャー投資には役立つかもしれません。
就職活動の参考にもなるでしょう。
「第2 事業の状況」には、「業績等の概要」の部分でその事業年度の出来事が文章で書かれています。損益計算書の会社の業績の数字と見比べながら読むと、どのような背景があったのかがわかります。
「第4 提出会社の状況」「株式等の状況」、の特に 「大株主の状況」を見ると、株主構成、特に大株主の構成が分かります。次に説明する役員の状況と合わせると、いわゆるオーナー会社かどうか、また、そのオーナーがどのくらいの株を持っているかが分かります。
何々ファンドとか、何々インベストメント、何々キャピタルといった名前は、主に投資ファンドです。
下世話な話ではありますが、配当金の情報と組みわせると、創業社長が配当金でどのくらいもらっているかも分かります。
役員報酬はもうもうわなくていい、と創業社長が発言して話題になることがありますが、充分な配当金収入があるのでしょう。
さて、問題の大王製紙ですが、平成23年3月期の有価証券報告書を見てみましょう。「大株主の状況」にはオーナー一族の名前はありません。
ただ、幾つか資産管理会社のような社名があります。これは、財務諸表の注記のあたりにある、「関連当事者」という情報と照らし合わせると、オーナー一族の会社かどうか分かります。
それによると、大王商工株式会社(7.39%)とエリエール総業株式会社(3.14%)が該当するようです。
これらを合わせると約10%がオーナー一族に支配されていることが分かります。
他にも書かれていない小さな持ち分はあるかもしれませんが、それらを足しても30%は超えないかもしれません。
オーナーとは言いますが、過半数は所有していないようです。
「役員の状況」を見ると、どのような役員構成かが分かります。
年齢も分かるようになっているので、いわゆるオーナー会社かどうかが分かります。
社長より年齢が2-30歳若い役員がいると、御曹司なのかな、と想像します。
ベンチャー企業では若い役員がもちろん目立ちますが、社外取締役として年配の、大企業幹部経験者が入っていることが多いのも特徴です。
他にも色々な情報が載っています。一通り目を通すと、会社のことがかなり分かるようになります。