固定費と変動費

1月8日日経新聞朝刊にて、信越化学工業金川千尋会長は、自社の半導体ウエハー事業の利益拡大への道について、「固定費は実質ゼロに近付いた。今後は変動費の勝負になる」と述べたそうです。

固定費の割合が大きいと、売り上げが上下したときの業績の変動が大きくなります。すなわち、売り上げが順調であれば問題ありませんが、売り上げが落ち込むとたちまち赤字に転落する、ということです。半導体産業が市況によって大きく業績が変動するのは、半導体産業の多くが装置産業で固定費負担が大きいからです。

したがって、業績の変動を最小限にするには、固定費を削減することが重要です。

一般に、売り上げに連動して増減するものを変動費、そうでないものを固定費といいます。新聞記事では減価償却の耐用年数を短くしたと書いています。すなわち、早期に減価償却を終了することで、償却終了後は減価償却費の負担がもはやなくなった=固定費を抑制することに成功したということなのでしょう。

しかしながら、固定費は減価償却費ばかりではありません。完全な時給制のアルバイトでもない限り、人件費も固定費ですし、固定資産税や水道光熱費の基本料金も固定費です。

したがって、「固定費を実質ゼロに近づける」際に、これらの固定費をどのように処理したのか興味深いところです。

「今後は変動費の勝負」という点についても、今変動費と思っているもののすべてが本当に変動費なのかどうかは一考の余地があります。

自社がサプライヤーに対して支払う費用が仮に変動費だとしても、そのサプライヤーの費用構造の中ではやはり固定費と変動費に分かれているはずです。したがって、変動費の削減を図ろうと思ったら、サプライヤーの費用構造の中で固定費と変動費をどのように削減できるかを考える必要があります。

すると、サプライヤーのさらに先のサプライヤーの費用構造も検討する必要が生じるかもしれません。

費用の削減というと、単にサプライヤーを叩いてコスト削減、という構図が思いつきますが、結局のところサプライチェーン全体で費用構造を再定義する方が、全体としてのコスト削減効果は高くなるかもしれません。

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