もう一つの想定外-誰が費用を負担するのか

東京電力の福島第一原子力発電所事故については、大津波による被害を「想定外」としていたことで話題になっています。
その是非についてはここでは話題にしませんが、この問題について、もう一つ重要な「想定外」があったと考えられます。

それは、このような事故があった時に、誰が費用を負担するのか、という仕組みが明らかになっていなかったことです。

一義的には運営主体であった東京電力が負うものと考えられていますが、報道にもある通り原子力損害賠償法の定めによる免責の可能性もあります。しかしながら、その免責の条件が明確に定められておらず、解釈をめぐって議論が続いています。

このようなことは、原子力発電所のような大きな案件でなくても、日常的な取引の契約でも十分に起こり得ることですが、一般に日本の契約では、細かい条項を定めず、最後に「本契約に定めのない事項については、甲乙協議の上誠意をもって処理するものとする。」という一文で済ますことが多いようです。
これはすなわち、「想定しえない事項については、事件が起こってから考えましょう」ということです。

誰でも必要以上に費用負担をしたくないものです。したがって、もし想定外の事項が発生した場合、その費用負担を巡って様々な議論が起き、結論がまとまらないまま時間ばかりが過ぎていく、ということが起こりえます。
この費用負担がまとまりませんと、決算を行うに当たって費用の見積もり作業にも影響を及ぼします。
一般にはその費用の可能性が高く金額を合理的に見積もられる場合は引当金を計上することになりますが、費用負担がまとまらないと合理的に見積もることができない、ということになるわけです。
経理担当者としては悩ましいところです。

契約を締結する際には、安易に「想定外」を作らず、多くの点をあらかじめ「想定」しておいた方が、後々の無用な議論を回避することができ、財務上も早い対応が可能となります。
経理担当者はこうした事態にも備える「想定」を日ごろから行っておく必要があるかもしれません。

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