他人が見ても分かる書類とは(1)

経理・財務の担当者が異動することが多い季節になってきました。
日本企業の多くは3月決算ですから、3月の決算作業がそろそろ落ち着き始める5月、6月に転職を考える方々は多いようです。

転職するということは、必然的に退職後に誰かが自分の仕事を引き継ぐことを意味します。また同様に、自分が新天地で働くときには、誰か前任者の仕事を引き継ぐわけです。

引継ぎを行う時に自分の後任がいたり、もしくは引き継がれるときに前任がいれば幸いです。
しかし、後任が入社しないまま自分の退職日が来てしまうこともありますし、入社してみたら前任者はいなかった、ということも少なくありません。

前任者がいない場合は、前任者が残した資料を基に、自分で作業をしていくことになります。

一般に、財務や経理の仕事は、一般の会計原則に従い、もしくは税法に従って処理するわけですから、比較的ルーティンワークであり、どこの会社でも仕事の内容は似たようなもの、と考えられがちです。
しかし、お金というのは会社にとって血液そのものです。人によってさまざまな血液型があり、また血管の網目は一人一人違うと言われています。
同様に、お金を扱う経理の仕事も、会社によってそれぞれやり方が違うのです。そこで、入社してみると、それぞれ会社固有のやり方があって戸惑うことも少なくありません。

そして、そのやり方は残念なことに十分な形で資料として残されていない場合が多いのです。
筆者の経験から、次のような場合が多く見受けられます。
1. 紙の資料の場合
1-1.  資料そのものがどこに保管されているか分からない。
1-2.  書類保管箱の明細のつけ方が不十分で(「xx資料一式」などと書かれている)、結局箱を全部出してみなければ何の資料が入っているか分からない。
1-3.  計算表の場合、計算式が不明なので、どの項目とどの項目を足すとその数値になっているのかが分からない。
1-4.  パソコンで作られた表らしいが、その元となるファイルがどこにあるのか分からない。
2. パソコンのファイルの場合

2-1.  フォルダが階層的、体系的に作られていないため、どの年次の資料がどこに保管されているかが分からない(たとえば、「決算」「決算関係」などと似たようなフォルダが幾つもある)
2-2.  幾つもの似たようなファイルがたくさんあり、どれが最終版なのか分からない(「最終版」と名付けられたファイルよりも後の保存日付のものが存在する)。
2-3.  表の数字の出所がどこか明記されていないので、どうやってその数字が導き出されたのかが分からない。
2-4.  予算や見積の表の場合、どういう前提条件のもとにそのような予算や見積が作られたのかが分からない。

このような状態で後を引き継ぐと、後任の人は相当な苦労をすることになります。

筆者は多くの経験から、上記のような状態でも何とか書類を掘り起こすノウハウがあり、通常よりは資料を読み解いたり、失われた鎖を見つけたりすることに慣れています。
しかし、そのような苦労はしないに越したことはありません。

次回「他人が見ても分かる書類とは(2)-ありがちな紙の書類」では、このような苦労を防ぐための方法についてご説明しています。

Comments are closed.

Facebook

Twitter