他人が見ても分かる書類とは(2)-ありがちな紙の書類

前回「他人が見ても分かる書類とは(1)」では、残された資料が十分でない事例を取り上げました。

筆者は昔、監査法人に勤めていましたが、監査法人では様々な工夫を凝らしていて、書類(「監査調書」と言います)を作成する際には、上司や先輩からも随分と厳しく言われました。
監査法人では、クライアントごとにチームが随時編成され、1-2週間程度の作業を行った後は、また次のクライアントに別のチームとメンバーで出向く仕組みになっています。
この場合、次回も自分が同じ仕事を担当するかどうかは不明であり、あるいはそのクライアントには二度と行かないかもしれないのです。
したがって、監査法人では、自分の作った書類は基本的には自分以外の人間が引き継ぐのが当たり前である、という前提に立っています。
そのため、書類の作り方の細かいところまでルールが統一され、その書類が何の目的でどのように作られたかが一目で分かるようになっています。

監査法人を辞めた後も今でもその経験は役に立っています。

先に挙げた問題を一つずつ見ていきましょう。

1-1. 資料そのものがどこに保管されているか分からない。

これは経理・財務に限らず、会社の全ての文書に言えることですが、文書を部署ごと、年次ごと、項目ごとに分けて体系的に管理しておくことが必要です。
中小規模の会社では、経理・財務がこうした総務的な文書管理の仕事も負うことがあります。
その体系はリスト化してどんな書類があるのかを一覧化しておきましょう。
つづいて、書類の保管場所を決め、その保管場所にも体系的に名前や番号をつけておきます。先のリストには、その保管場所の名前や番号も明記しておきます。

1-2. 書類保管箱の明細のつけ方が不十分で、結局箱を全部出してみなければ何の資料が入っているか分からない。

これは、上記のリストの作り方に問題があるほか、書類のタイトルのつけ方にも問題があります。
「xx関係資料」という名前は一見分かりやすいのですが、時が経ちその件を覚えている人が少なくなるにつれ、何の関係の資料だったかという記憶も失われていきます。
「xx関係」だけでなく、できる限りその下のレベルの、一目でみてわかる内容も副題として付記しておく必要があるでしょう。
少々手間はかかりますが、最初の数ページをスキャンして、そのファイルはサーバーに保管して見られるようにしておくのも一案です。

1-3. 計算表の場合、計算式が不明なので、どの項目とどの項目を足すとその数値になっているのかが分からない。

この図を見てください。

一番下に、「固定費」「変動費」と書いてあるので、固定費と変動費に相当するものをそれぞれ集計しているらしいことは分かるのですが、どれが固定費で、どれが変動費かが書いていないため、見当をつけて電卓を打ってみるしかありません。

こちらの図はいかがでしょうか。

体裁はもっと整えた方がいいと思いますが、何が「固定費」で何が「変動費」なのかが明記されているので、後から見て検証したり理解したりしやすいです。

1-4. パソコンで作られた表らしいが、その元となるファイルがどこにあるのか分からない。

パソコンで作ったファイルは、ファイル名はもちろん、その保管されているフォルダも明記するようにしましょう。
Excelなどは、「ヘッダ」部分に次のような文字を入れておきますと、ファイル名やフォルダ名も印刷されるようになります。
&[パス]&[ファイル名]!&[シート名]
特に、この「パス名」が入っているのといないのとでは、元のファイルがどこにあるかを探す効率が全く違います。

こんなこと当たり前だろう、と思われるのですが、このようなちょっとしたことでも現場では案外行われていないことが多いのです。
筆者の経験でも、「せめて一工夫あったら良かったのに」と思うことも少なからずありました。

次回は、(3)-フォルダ構造で、ファイルがどこに保管されているのか分からない事例をご紹介します。

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