他人が見ても分かる書類とは(6)-予算や見積の前提

前回「他人が見ても分かる書類とは(5)-外部リンクの活用」では、表の数字の出所がどこか明記されていないと、どのようにしてその数値が導き出されたのかが分からないという事例をご紹介しました。

今回は、「パソコンのファイルの場合」のうち、
2-4. 予算や見積の表の場合、どういう前提条件のもとにそのような予算や見積が作られたのかが分からない、事例と対策をご紹介したいと思います。

通常の経理業務であれば、証拠に基づいて経理処理を行いますから、その証拠をきちんと残しておけばよいわけですが、予算や見積といった数字を扱う場合には、その前提条件や根拠が分からないと、どうしてその数字に至ったのかが分からなくなります。
筆者の経験では、経理書類であれば伝票に総勘定元帳、仕訳の元となる請求書や領収書などはきちんと整理して綴じこまれ、これらが探しにくいという事例はあまり見たことがありません。
一方、予算や見積に関連する書類については、最終的な予算や見積の書類はあるものの、その計算はどういう前提に基づいて作られたのか、をきちんと説明する補足文書が丁寧に保管されていない例が多いようです。

予算は実際に運用する際に実績と比較され、その比較分析が経営に役立てられます。その際、どのような前提で作られたのかが明らかでないと、実績との比較も難しくなります。
また、見積については、実績の経理処理に使われる場合も少なくありません。引当金の計上、減損会計といった会計処理では、見積の要素が重要となります。その際に、どのような前提で見積がなされたのかが明確でないと、会計処理の妥当性を後で判断することが難しくなります。

これらのためには、前提条件や根拠をきちんと整理して記録し、かつ予算や見積の書類と一緒に保管しておくことが必要です。
また、それらはできる限り詳しく記録しておいた方がよいでしょう。後から見ると、細かい部分で記憶があいまいになっていることも多いからです。

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