日本企業のROE、前年比改善

7月3日日経新聞朝刊で、上場企業のROEが2011年3月期に平均6.0%となり、前年同期より2.1%改善したとの報道がありました。
それでもなお、米欧の主要企業のROEは平均10%を上回るそうです。

日本企業のROEの低さは、よく話題に取り上げられます。
筆者は、日本企業の特徴から、次の2つの点を原因として見ています。

一つは法人税の高さです。
日本の法人税の実効税率は約40%です。他方、米国はほぼ同水準と言われるものの、欧州のそれは約30%前後と言われています。
したがって、日経新聞の報道の例で、税引き前の水準で考えると、
日本のROE=6.0%÷(1-40%)=10%
欧州のROE=10%÷(1-30%)=14%
となり、依然として欧州に差があるものの、その差は縮まります。
たとえば、もし欧州並みにROEを得ようと思うと、税引き前では10%÷(1-40%)=16.7%も確保しなければなりませんから、なかなか大変なことだと思います。
日本の税負担の高さについては、財界からも法人税の負担軽減の提言がたびたびなされますが、このようにROEで考えると、その負担の高さはやはり目立ちます。

もう一つは、数値的には検証をしていないため筆者の推測の域を出ませんが、日本企業の価格設定にあると思われます。
多くの欧米企業、特にブランドイメージの高い企業は、高いマージン率(粗利率)を得ているといわれています。
ルイ・ヴィトンのような高級ブランド品、メルセデスのような高級車などは、筆者は実際の粗利率を知りませんが、相当の粗利率と考えてよいでしょう。

一方、ソニー、パナソニック、トヨタなどは世界的にも知らない人のないほどのブランドですが、それほどの高い粗利率を得ているとは思えません。
したがって、こうした粗利率の差が、最終的なROEの差につながっていると言えそうです。

もちろん、日本企業の付加価値戦略が誤っているわけではありません。日本企業の製品は昔から安価で高品質と言われますが、欧米企業に比較して低いであろう粗利率は、安価である点にあるだろうと思います。
すなわち、日本企業の付加価値戦略においては、付加価値はROEを通じて資本家に渡るのではなく、安価を通じて顧客に渡っていると考えられます。
資本家から見れば、当然に得るべき付加価値を搾取されている印象がありますが、安価を通じて顧客に渡ることで、長期的なロイヤリティ=企業の持続的成長を得ているとも考えられるのです。

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