コメ先物の試験上場-先物取引の本質とは

コメ先物が東京穀物商品取引所と関西商品取引所に試験上場されることが決まったということで、日経新聞でも7月7日付朝刊より特集記事が組まれています。

世界で最初に先物取引を始めたのは江戸時代の日本で、コメの価格をヘッジするためだったと言われています。したがって、今回商品取引所に試験上場されるというのは、ある意味で温故知新と言えるでしょう。

さて、先物取引というと、「濡れ手に粟のぼろもうけ」とか「大損をして全財産を失った」と言われる投機性の強い投資の印象があります。

■先物取引の目的
先物取引の実際の目的は、相場変動があって将来の価格が予想しづらいものについて、その価格を今の時点で確定してしまうことにあります。

たとえば、日本で自動車を製造しアメリカに輸出している自動車会社が、9月に1台1万ドルの車を1000台(すなわち1千万ドル)輸出する計画を立てていても、為替相場がいったい幾らになるのかが分からないようでは予算の立てようもありません。
そこで、今の為替相場を勘案して、例えば「今年度の9月に1千万ドルを80円で売る」という契約を銀行と結びます。そうすれば、確実に8億円を手にすることができるわけです。
もちろん、その時に円安となり、1ドル90円になっていれば9億円を手にできたはずなので、損をすることになります。他方、1ドル70円になってしまうと、何も契約がなければ7億円に目減りしてしまう損を回避したことになります。

為替相場が幾らになるかは予想できないので、将来の変動(これを「リスク」といいます)を今固定化してしまう(これを「ヘッジ」といいます)のが先物取引です。

■先物取引と先渡取引
ただし、もっと専門的にいうと、上記の自動車のように、自分の取引に基づいて将来の取引額を銀行とヘッジする方法は特に「先渡取引」と呼んで「先物取引」と区別しています。

先渡取引と特に区別して呼ぶ先物取引は、銀行との相対ではなく、A.取引所で取引されることと、B.差金決済によること、とされています。

■先物取引の例
たとえば上記の自動車の例でいうと、銀行と相対で取引をする代わりに、取引所を使って先物をやり取りすることもできます。

自動車会社は、この1千万ドルを9月に、80円で売ると取引所で約束します。これが先物契約で、A.に述べたように、取引所で取引されることがポイントです。
9月に、為替相場が1ドル75円になったとしましょう。自動車会社は1.の1千万ドルを75円で売ります。得意先からは7億5千万円を受け取ったことになります。
次に、先物契約を約束通り実行します。1千万ドルを1ドル80円で取引所で売る約束になっているわけですが、このとき取引所からは、
(先物相場80円-実際の相場75円)×1千万ドル=5千万円だけを受け取ります。このように、先物相場と実際の相場の差額だけでやり取りすることを、B.に述べた「差金決済」と言います。
得意先から受け取った7億5千万円と、取引所から差金決済で受け取った5千万円を合わせて、自動車会社は上記の先渡契約と同様、8億円を手にすることになります。

反対に、9月に、為替相場が1ドル85円になったとしましょう。自動車会社は1千万ドルを85円で売ります。得意先から8億5千万円を受け取ったことになります。
次に、先物契約を約束通り実行しなければなりません。1千万ドルを1ドル80円で取引所で売る約束になっているわけですが、このとき取引所からは、
(先物相場80円-実際の相場85円)×1千万ドル=5千万円を払えと言ってきます。
得意先からは8億5千万円受け取っていますが、取引所に5千万円差金決済しなければならないので、自動車会社が手にするお金は結局8億円になります。

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