個人事業を始めた時、やっておいた方がよい税務手続き

起業家の方々の税務のお手伝いをすることがあります。
最初は自分でやろうとしていた、あるいはやっていたが、だんだん手に負えなくなったので税理士にお願いしたい、というご依頼です。

残念ながら、必要な届け出をしていらっしゃらない方もありますし、あるいは、絶対必要ではないが、こういう届をしておいた方が後々楽だったのに、と思うこともあります。

こうした届け出は必ず税理士を通じて行わなければならない、というものではありません。
起業間もないのでお金をかけたくない、という場合には、もちろんご自分で書類を作成して提出することも可能です。
前回は会社設立の際にやっておいた方が良い手続きをご紹介しましたが、今回は個人事業主として事業を始められる際にやっておいた方が良い手続きをご紹介します。

届け出の書類を作成する前の準備

届け出の書類を作成する前の準備として、次のことに留意したほうが良いでしょう。

事業名、住所、代表者名のスタンプを用意する

事業を始めると、税務署への届出だけでなく、様々な申込書など、沢山の書類を書くことになります。全部を手書きにすると大変ですので、
1. 事業名(店名、オフィス名その他)
2. 住所
3. 氏名
のスタンプを用意するとよいでしょう。なお、スタンプを作るときは、これらの3つを一つのスタンプにするのではなく、3つバラバラにできるように作っておきます。
書類によって、店名や住所、代表者名が上下だったり左右だったりするので、3つで一体のスタンプだと使えないためです。

届出書は2部作成する

1部を提出用、1部を手元控えとするためです。窓口へ2部持っていくと、1部は回収されてしまいますが、もう1部は「収受印」というスタンプを押して返してくれます。
2部同じものをいちいち作成するのではなく、1部を作成した後でコピーを取る形でも構いません。ただし、コピーは印を押す前にしましょう。
郵送で提出することもできますが、切手を貼った返信用封筒を同封しておく必要があります。

手続きは税務署と自治体の両方

手続にもよりますが、たいていは、所管の税務署のほか、所在の自治体に行う必要があります。
自治体は、東京23区であれば都税事務所1か所で済むのですが、それ以外の地域では、市区町村役場と都道府県税事務所の両方に行う必要があります。
用紙は、これら事務所でもらってくることも可能ですが、たいていの場合はwebサイトで手に入ります。
所管の税務署がどこになるかは、国税庁のwebサイトで調べることができます。
http://www.nta.go.jp/soshiki/kokuzeikyoku/kankatsukuiki/syozaiti.htm

必要な届け出について

以下、事業を始めた場合の税務の手続きを記します。会社を設立した場合はこちらでご紹介しています。
◎は必要な手続き、○はしておいた方がよい手続きです。

◎個人事業の開業・廃業等届出書

事業を始めた時に必要な届です。税務署と自治体の両方に必要です。
税務署への届け出は設立から2か月以内です。詳しい手続と用紙はこちらにあります。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
自治体については、お住まいの都道府県、および市町村でお調べください。
「神奈川県 個人事業 開始 届出」といったキーワードで検索し、目的の自治体のwebサイトで調べましょう。用紙もそこで手に入ると思います。
東京都への届け出は設立から15日以内ですので注意が必要です。

◎給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

給与を支払う際に必要な届です。最初は無給だから不要、と思われる場合でも提出はしておきましょう。
急にアルバイトを雇ったりするかもしれないからです。
税務署への届け出は事業開設から1か月以内です。詳しい手続と用紙はこちらにあります。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_11.htm

○源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書

ものすごく長い名前ですが、これは絶対に出しておいた方がよい届出書です。
給与を支払うと、一定の金額を源泉徴収する必要があり、源泉徴収した税金は翌月10日までに納付する必要があります。
言い換えると、毎月給与を支払うと、毎月10日源泉税を納付する必要があるわけです。
最初は従業員を雇わないのでいいや、と思う方もあるでしょう。
源泉は、給与だけでなく弁護士や税理士、社会保険労務士といった人に払う報酬にも行う必要があります。

源泉税の納付は普通、金融機関の窓口で行う必要があります。
毎月10日に金融機関に出向くのは、起業したばかりの人にとっては大変な手間です。
この届け出をしておくと、源泉税の納付は年2回、7月10日と1月10日までに行えばよいことになります。

なお、給与の支給人員が常時10人未満、という制限があります。
提出した日の翌月に支払う給与等から適用されることになっているので、なるべく早くに提出したほうが良いでしょう。
詳しい手続と用紙はこちらにあります。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_14.htm

○所得税の青色申告承認申請書

青色申告という言葉は耳にされた方も多いでしょう。この制度が承認された事業の申告書の表紙は青色になるので、このような名前がついています。
青色申告が認められると、赤字になった年の損失を繰り延べて、翌年以降支払うべき税金と相殺する(「繰越控除」といいます)ことができるようになります。
また、そのほかにもさまざまな税金の特典を受けられることがあります。
反対に義務として、きちんと簿記に従った帳簿をつけることが求められます。
最近では市販やフリーの会計ソフトを使えば、簿記に従った帳簿が作成できるようになっていますので、出しておいた方が良い申請書です。

税務署への申請は、前の年の事業年度終了日まで、または設立3ヶ月以内です。詳しい手続と用紙はこちらにあります。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm

○青色事業専従者給与に関する届出

個人事業の場合、親族に仕事を手伝ってもらって給料を払っても、その給料は経費に算入できません。
ただし、この届出を行っておくと、条件を満たす場合は給料を経費として算入できるようになります。
詳しい条件はこちらに書かれています。
ただし、この取り扱いを受けると、今度は配偶者控除などが受けられなくなります。起業間もなくで、大した給料も払えないようなときは、配偶者控除を受けた方がメリットが大きいこともあるので注意が必要です。

税務署への申請は、事業開始、またはその親族の方に給料を払って手伝ってもらうようになってから2ヶ月以内です。詳しい手続と用紙はこちらにあります。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/12.htm

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