ROA(総資産利益率)とは

6月9日付日経新聞の朝刊に、J.フロントリテイリング会長の奥田氏がROAの目標について述べておられました。
一般に投資指標としてはROE(資本利益率)が使われますので、「あれ、ROEではないの?」と思われた方も多いかもしれません。

ROEやROA、投資効率を図る指標としてよく用いられますが、経営がどのように動くと、それらの指標がどのように動くのかは、案外知られていないかもしれません。

ROEとROA、二つの定義式は次の通りです。

ROE=当期利益÷株主資本
ROA=当期利益÷総資産

次に、この二つの式を結び付けてみますと、その違いがよく分かります。
下記の2番目の式で、敢えて株主資本を割って掛けているところがミソです。

ROA=当期利益÷総資産
=当期利益÷株主資本×株主資本÷総資産
=ROE×自己資本比率

(自己資本比率=株主資本÷総資産)
さらに、株主資本と総資産の関係は、負債+株主資本=総資産 となります。

さて、ROAを大きくしようと思ったら、ROEを大きくするか、自己資本比率を大きくするか、ということになります。
しかし、どちらかを大きくしようとして、反対にどちらかが小さくなってしまうと、その効果が相殺されてしまうことにもお気づきと思います。
ROEと自己資本比率、両方大きくなるのが理想ですが、少なくとも、どちらかを上げたときに、他方が下がらないようにしなければなりません。

自社株買いを行ってROEを上げる、ということを時々新聞で目にします。上の式を見ると、ROEは上がるのですが、自社株買いの資金を借り入れで賄ったりすると、負債の部分が増え、結果的に自己資本比率が下がってしまいます。

経営を振り返ってみて、収益を生みそうもない資産を売り払えば、そして仮にそのお金で負債を返済すれば、自己資本比率が上がってROAが上がります。
さらには、収益を生まない資産に限らず、低収益に甘んじている資産を売り払い、そのお金でより高収益の資産に投資すると、自己資本比率は変わらないかもしれませんが、ROEは大きくなります。
「もしドラ」で有名なドラッカー博士の「選択と集中」という言葉があります。経営資源を高収益の資産に投資する、という考え方は、ROAに効果が表れてくるわけです。

他にも経営の施策はあるでしょう。どんな施策を打つと、ROAがどう変わるか、を考えてみると、興味深い結果が得られることでしょう。

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