資本コストとは(その1)

2011年10月6日付日本経済新聞の「大機小機」というコラムに興味深い記事がありました。
記事では、米ヒューレット・パッカード社がパソコン事業の分離を検討したことと、日本企業の売上高営業利益率の低さについて述べています。
同部門の売上高営業利益率は5%どまりであると言われているのに対し、日本企業の多くが売上高営業利益率5%にも達していないということで、資本コストを低く見積もりすぎていると述べています。

資本コストとは

ものの本を読みますと、「資本コスト」とは、「資本を調達するコスト」と書かれています。
資本は他人資本、すなわち借入金や社債などの債務、と自己資本、すなわち株式に分けられます。
借入金や社債であれば、利息が調達コストであることは容易に理解できるでしょう。
いっぽう、株式のような自己資本は、一般には「返さなくてよいお金」と考えられ、これに調達コストがあるとは理解しにくい面があります。

自己資本の資本コストとは

自己資本の資本コスト(資本調達コスト)とは何でしょうか。
それは配当金です。株主であれば、投資=株式に対して、リターンを求めるのは当然で、そのリターンとは配当金、ということになります。
会社は、十分な利益もないのに配当をすることは法律で禁じられているので、配当をするには、裏付けとなる利益が十分に上がっていなければならない、ということになります。

将来株価が上がれば、株主は売却益を手にすることができるのだから、配当がなくても株価が上がっていればよい、という見方をすることもできます。
ただし、根拠もなく株価が上がるわけではありません。この先大きく業績が伸びる、という期待があるから株価が上がるわけで、やっぱり十分な利益を上げることが必要になります。

自己資本の資本コストは借入より高い?

次に、自己資本の方が借入よりも調達コストが高い、と言われるのはなぜでしょうか。
トヨタ自動車は平成23年6月17日の株主総会で、年間の配当金を50円とすることを決議しました。
トヨタ自動車単体の平成23年3月末の一株当たり株主資本(=自己資本)は、2,081円です。したがって、自己資本の資本コストは、50円÷2,081円=2.4%ということになります。

配当は、会社の利益を原資にするわけですから、会社は配当して十分なだけの利益を上げていなければなりません。
配当する前には税金も払わなければなりませんから、50円の配当をしようとすれば、83円の利益を上げなければなりません。
50÷(100%-40%)=83円、日本の税率は、法人税、住民税、事業税など全て含めて約40%と言われています。これを実効税率といいます。
83円÷2,081円=3.9%となりますので、借入と比べると高い率になっていることが分かります。
つまり、2,081円の資本を株主から預かって、83円以上の利益を上げなければ、50円の配当をすることができない、ということです。

資本コストとは(その2)に続く

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