年金はどうして企業の業績に影響を与えるのか(その2)-確定拠出年金

前回は、企業の決算に大きな影響を与える可能性のある確定給付年金と年金会計の関係について説明しました。
今回は、その影響を回避する確定拠出年金についてご説明します。

確定拠出年金は、その名のとおり、企業からの「拠出額」が「確定」している年金です。


企業からの拠出額が確定しているので、その後の運用や、給付額の確定については企業は責任を負いません。
この点が、「給付額」が「確定」している確定給付年金と全く異なるところです。
また、企業の責任は年金の拠出に限られていることから、年金会計の上でも、拠出した時点で費用として計上するだけで済み、決算への影響が少ないという特徴があります。

このため、外資系企業では、年金会計から生じる業績への影響懸念から、確定給付年金をやめて確定拠出年金へ移行する企業も多くありました。

企業会計の上からはメリットのある確定拠出年金ですが、年金資産の運用上のリスクや、運用成績そのものの良しあしのリスクが消えてしまったわけではありません。

運用成績が良くなければ、それは年金支給額の減額、という形で受給者に跳ね返ってきます。

したがって、どのような資産運用をするかは、年金受給者が自分で決めることになっています。この点が、運用自体は全て年金基金に任せる確定給付年金と異なるところです。
したがって、年金受給者自身が投資運用に高い関心を持ち、責任を持って運用することが求められます。

我が国では、「お金に関すること」に高い関心を持つことはどちらかというと「守銭奴」「金に汚い」とされ、否定的なイメージがありました。
その一方で、任せきりだった年金運用では、AIJのような事件が起きたり、年金会計によって企業そのものの業績に大きな影響を与えるケースも出てきています。
自分の年金は自分で考える確定拠出年金は、必然的に「お金に対する関心」を高めざるをえない効果も含まれているようです。

また、確定拠出年金は導入されてまだ年数もあまり経たないことから、税務上のメリットもあまり大きくありません。

閣僚会議の「成長ファイナンス推進会議」における、確定拠出年金を拡充する方針も、もう少し確定拠出年金の制度上の魅力を高めて、確定給付年金からの移行を進めようという意図が感じられます。

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